表面親水性でかつ,細胞接着性を有し,フォトリソグラフィーによる微細加工が可能な感光性シリコーン樹脂(ADEKA ナノハイブリッドシリコーン FX-V8330)を開発した.FX-V8330 は,シロキサン主骨格にヒドロキシフェニル基やカルボキシアリール基といった極性基を持ち,従来のポリジメチルシロキサンと比較して,親水性の表面機能を与えた.FX-V8330 基板上における U2OS 細胞と COS-1 細胞の培養では,コロナ放電処理を施したポリスチレンと同等の細胞接着性を示した.初代培養細胞である褐色脂肪前駆細胞の培養においては,コラーゲン被覆ガラス基板に匹敵する細胞接着が観測された.さらに,FX-V8330 基板に接着した細胞は,トリプシン処理による剥離,継代培養,分化誘導が可能であり,分化誘導に伴う細胞の死亡率が低く抑えられ,培養基材として優れた性質を有していた.