2011 年 68 巻 8 号 p. 579-593
高度に配列制御が施された分子組織体は,そこに生じる多様な分子間相互作用や,それに基づく協同現象により,単一分子ではなし得ない,優れた分子機能を発現する.こうした分子集合系の高次組織に新規物性を発現させるためには,機能性部位がどのような起源に基づいて構造構築・形態形成に至るのかを本質的に理解し,構成分子の配列・充填状態を制御する必要がある.
本報では,Langmuir-Blodgett(LB)法をおもに用いた,“超薄分子組織膜の手法”により配列制御を施した両親媒性高分子を中心に,その関連物質を含めて,二次元分子性薄膜中での構造形成について議論する.具体的には,金属捕集能を有する両親媒性櫛形ポリマーの分子性薄膜,ならびに水面上での単粒子膜形成が特徴的な含長鎖アルキル芳香族ポリアミド,加えて,挙動が類似した低分子系の例として,機能性部位の stack 状態によって導電物性の変化する電荷移動錯体の構造転移についても紹介する.