本報では,セルロースの側鎖設計による熱可塑性の付与,および溶融紡糸による繊維化とその特徴について紹介する.
セルロースは,分子鎖内や分子鎖間で強固な水素結合のネットワークを形成しているため,熱可塑性を示さない材料である.セルロースへ熱可塑性を付与するため,セルロースのヒドロキシル基を基点とした側鎖設計について検討した結果,適切な側鎖をある一定の比率で導入したセルロース混合エステルが,溶融紡糸に適した熱可塑性と繊維の機械的特性を両立しうることがわかった.
最適化したセルロース混合エステルを用いて溶融紡糸を行うため,溶融粘度や伸長粘度などの解析に基づいて溶融紡糸プロセスを設計した.その結果,衣料用繊維に適した熱可塑性セルロース繊維を得ることが可能となった.また,溶融紡糸を適用することで,従来の溶液紡糸によるセルロース系繊維と異なり,多彩な繊維断面の繊維や軽量繊維,極細繊維を得ることも可能となった.
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