抄録
低加速電圧での走査型電子顕微鏡(SEM)により,高分子接着界面の剥離面を高分解能観察することにより,分子鎖引き抜きにより破壊する比較的弱い界面の破面に特徴的なナノサイズのフィブリルの存在を見いだした.非対称ダブルビームカンチレバー(ADBC)法による界面破壊強度と低加速SEMにより観察された剥離表面形態との相関を検討し,フィブリル構造は接着界面での分子鎖からみ合い構造を反映していることが示唆された.これまでに筆者らは,ポリメチルメタクリレート/スチレン–アクリロニトリルランダム共重合体(PMMA/SAN)界面,ポリスチレン(PS)界面,および,ブロック共重合体を界面に介在させたPS/PMMA界面などを扱ってきた.本報では,これらの異なる系で得られた界面接着強度と剥離表面構造の相関に関する結果をまとめ,界面破壊により形成される構造とからみ合い構造との相関を考察する.