高分子論文集
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69 巻, 7 号
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総合論文
  • 葛原 亜起夫
    2012 年 69 巻 7 号 p. 313-325
    発行日: 2012/07/25
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    ケラチン繊維の内部構造におよぼす化学修飾の影響について詳細に調査することを目的とし,ラマン分光法により,ケラチン繊維の深さ方向分布について,キューティクル細胞とコルテックス細胞を分離することなく,直接キャラクタリゼーション可能な新しい方法を開発した.この解析テクニックを用いることにより,従来測定不可能であった黒髪のラマンスペクトルの測定に成功した.還元剤(チオグリコール酸とL-システイン)とケラチン繊維間で発生する不均一反応(-SS- 結合の切断)について,分子レベルにおける解析ができることを示した.とくに,上記毛髪断面試料の深さ方向におけるジスルフィド(-SS-)結合量,システイン酸量,ランダムコイル含量だけではなく,アミドIバンド解析により,タンパク質二次構造,すなわちα-へリックス含量およびβ-シート/ランダムコイル含量のキャラクタリゼーションが可能となることを示した.
  • 堀内 伸
    2012 年 69 巻 7 号 p. 326-333
    発行日: 2012/07/25
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    低加速電圧での走査型電子顕微鏡(SEM)により,高分子接着界面の剥離面を高分解能観察することにより,分子鎖引き抜きにより破壊する比較的弱い界面の破面に特徴的なナノサイズのフィブリルの存在を見いだした.非対称ダブルビームカンチレバー(ADBC)法による界面破壊強度と低加速SEMにより観察された剥離表面形態との相関を検討し,フィブリル構造は接着界面での分子鎖からみ合い構造を反映していることが示唆された.これまでに筆者らは,ポリメチルメタクリレート/スチレン–アクリロニトリルランダム共重合体(PMMA/SAN)界面,ポリスチレン(PS)界面,および,ブロック共重合体を界面に介在させたPS/PMMA界面などを扱ってきた.本報では,これらの異なる系で得られた界面接着強度と剥離表面構造の相関に関する結果をまとめ,界面破壊により形成される構造とからみ合い構造との相関を考察する.
  • 湯沢 哲朗, 渡辺 忠一, 大谷 肇
    2012 年 69 巻 7 号 p. 334-345
    発行日: 2012/07/25
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    縦型加熱炉熱分解装置を用いる熱分解GC/MSシステムをベースに,Xeランプを光源とするマイクロ紫外線(UV)照射装置を組合せた,オンラインUV照射熱分解GC/MS測定システムを開発し,ポリスチレンやポリカーボネートの光・熱・酸化劣化により生成する揮発劣化生成物をオンラインでGC/MS分析し,劣化挙動を解析することができた.また,耐衝撃性ポリスチレンや塗膜試料について,マイクロUV照射装置による照射後残留物の発生ガス–質量分析を通じて劣化状態を評価した結果,従来の促進劣化試験法などによる結果とよい相関が認められるだけでなく,劣化評価に要する時間を大幅に短縮できることを示した.さらに,ポリ塩化ビニルを試料として,光触媒による有機物の分解反応機構の解析にも本法を応用した.
  • 真田 雄介, 秋葉 勇, 橋田 智史, 白石 貢一, 横山 昌幸, 八木 直人, 篠原 裕也, 雨宮 慶幸, 櫻井 和朗
    2012 年 69 巻 7 号 p. 346-357
    発行日: 2012/07/25
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    ポリエチレングリコール–ブロック–ポリ部分ベンジルエステル化アスパラギン酸が水中で形成するミセルの内部構造に関して,化学組成との関係を検討した.ベンジル化率(FBzl)とアスパラギン酸残基数(DPAsp)の異なる9試料を合成し,光散乱とX線散乱を用いてミセルの会合数(Nagg,w),コアの半径(RC),およびその他のパラメータを決定した.Nagg,wRCを決定する主な因子は,コアの疎水性を反映するFBzlであった.これまで高分子ミセルの光散乱は光学精製が難しく会合数などの測定は困難だったが,フィールドフローフラクショネーション(FFF)で光学精製後,これに接続された光散乱検出器で各分画の分子量を測定することで解決される.また,疎水性薬剤としてレチノイドのひとつであるLE540をコアに内包させたときのミセル構造の変化についても紹介する.
  • 陣内 浩司
    2012 年 69 巻 7 号 p. 358-365
    発行日: 2012/07/25
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    近年,高分子の不均一構造を三次元的に実空間観察することにより高分子材料の評価・解析に資する一連の顕微鏡群が注目を浴びている.これらの中にはトモグラフィー(ギリシア語でsliceを意味する“tomos”とimageを意味する“graph”の造語)を基盤とするものが多い.本報では高分子材料分野でとくに有効と思われるX線CT法および電子線トモグラフィー法を取り上げ,近年とくに発展の著しい動的三次元観察やメゾスケール(nmとµmの間のスケール)の三次元イメージングに焦点を当て,これらの手法の最近の進歩について筆者らの最近の研究例を交えて紹介する.
一般論文
  • 山本 勝宏, 三輪 洋平
    2012 年 69 巻 7 号 p. 366-372
    発行日: 2012/07/25
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    ガラス転移温度(Tg)評価法の一つとして電子スピン共鳴法(ESR)のマイクロ波出力飽和現象を利用した手法について報告する.ポリスチレン(PS)の末端もしくは内部セグメント,結晶性高分子ポリエチレンPEの内部セグメントに常磁性ラジカル種をラベル化し,ラベル部位近傍の局所Tg評価を行った.マイクロ波出力(P)が小さい場合,ESRシグナル強度はP1/2に比例して増大するが,過剰出力ではこの関係から逸脱し,シグナル強度が飽和する.この飽和挙動と分子運動の緩和時間が関連することを利用しTgを評価する.測定結果から,PSの末端と内部セグメント近傍のTgに差がないことがわかった.これはTg付近では,観測セグメントと隣接する他セグメントとの協同運動性が大きいことに起因する.またPEのTgが結晶化度に依存して変化することを明らかにした.この手法は一般的な測定手法では困難な系のTg評価に有効である.
  • 槇 靖幸, 土橋 敏明
    2012 年 69 巻 7 号 p. 373-381
    発行日: 2012/07/25
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    光散乱法は,希薄溶液中の高分子鎖のキャラクタリゼーションの研究において広く用いられてきたが,Θ点以下における実験例は限られる.本報では,t-ブチルアルコール+水(2.5 vol%)中のポリメタクリル酸メチル(PMMA)希薄溶液の特異な性質を利用して,Θ点以下における光散乱測定を行った結果について示す.PMMA溶液の第二ビリアル係数A2の温度依存性は,Θ点以下で極小と極大をもつ複雑な形である.実験結果は,いくつかの理論による計算結果と互いに大きく異なり,異なるモデルに基づく理論計算値の中間の値をとることが示された.また,コイル–グロビュール転移によるPMMA鎖の収縮過程を静的・動的光散乱により測定し,平均二乗回転半径⟨S2⟩および流体力学的半径⟨RH⟩の時間に対する減少とともに,これらの比ρ=⟨S21/2/⟨RH⟩が時間とともに減少する過程を観察した.ρの単調な減少は,鎖の構造がランダムコイルから球状粒子へ変化する過程を表していると解釈される.また,静的光散乱を用いてPMMA鎖がグロビュールからランダムコイルへ膨張する過程を測定した.長時間エイジングされたグロビュールほど膨張の時定数が大きく,エイジングに伴ってグロビュールの構造が時間とともに非常にゆっくり変化することが示唆された.
  • 曽我部 啓介, 右手 浩一
    2012 年 69 巻 7 号 p. 382-386
    発行日: 2012/07/25
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    共重合モノマーとしてアクリル酸を含む二元および四元共重合体の組成の分子量依存性を 1H Diffusion-Ordered NMR SpectroscopY (1H DOSY)により測定した.共重合体中のアクリル酸単位を感度良く検出するために,カルボキシル基のプロトンをトリメチルシリル基に誘導した.共重合体の試料溶液に過剰量のN,O-Bis(trimethylsilyl)trifluoroacetamideを加え,そのままDOSY測定を行うという簡便な方法により,アクリル酸単位の拡散係数分布を明らかにできた.この方法を用いて,メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/スチレン/アクリル酸共重合体3種類について,共重合組成の分子量依存性と共重合条件(モノマーの仕込み方法)との相関を調べた.
  • 近藤 泰史, 中村 洋
    2012 年 69 巻 7 号 p. 387-391
    発行日: 2012/07/25
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    重量平均分子量Mwがそれぞれ3.55×105, 7.06×105, 1.09×106のポリスチレン標準試料に対してサイズ排除クロマトグラフィー–多角度光散乱(MALS)測定を行った.分子量分布および拡散などによるピーク幅の拡大効果をそれぞれGauss関数によって表すことにより,屈折率(RI)検出器による流出曲線と各流出時間におけるMwおよびz-平均二乗回転半径⟨S2zのMALSによる測定値を表すことができた.次いで,これら3試料の混合物に対して同様の測定を行った.得たRI流出曲線は各試料に対する流出曲線の和で表されなかった.これは,低分子量成分がカラム中のゲル表面の細孔をふさぎ,高分子量成分を排除したためと理解された.この効果を考慮することで,混合試料に対するRI流出曲線,Mw,⟨S2zの測定結果をほぼ定量的に表すことができた.⟨S2zMwに対してプロットすると,高分子量領域では標準データ(文献値)に近くなったが,分子量の低下とともに上にずれ,低分子量で再び標準データに近づいた.この標準データからのずれはz-平均分子量MzMwに対する比Mz/Mwの増大と対応した.Mz/Mwを流出時間tの関数として表すと,流出初期では1に近いが,tとともに増大し,極大を経た後に再び1に近づいた.この極大に対応するtはRI流出曲線の極大値におけるtよりも長時間にあった.これは,少量含まれる高分子量成分がMz/Mwを効果的に増加させることによるものと理解された.
  • 山城 舞, 杉村 俊英, 小林 猛, 堤内 要
    2012 年 69 巻 7 号 p. 392-398
    発行日: 2012/07/25
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    マグネタイトナノ粒子(MNPs)に各種リガンドを結合させた材料は,核磁気共鳴画像法(MRI)の標的機指向性造影剤や温熱療法などへの利用が期待されている.筆者らは,可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合法を用いてリガンド結合性を有するN-ビニル-2-ピロリドン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸三元共重合体(P(VP-MMA-MA)) (7)を合成し,その存在下,鉄ペンタカルボニル(Fe(CO)5)の高温熱分解によりP(VP-MMA-MA)被覆マグネタイトナノ粒子(P(VP-MMA-MA)-MNPs) (8)を調製した.得られたP(VP-MMA-MA)-MNPsは蒸留水およびリン酸緩衝生理食塩水での分散性が非常に高く,調製後数ヶ月経過しても沈殿は確認されなかった.また,透過型電子顕微鏡(TEM)観察よりP(VP-MMA-MA)-MNPsのマグネタイトコアサイズはおよそ10–15 nm,リン酸緩衝生理食塩水中での動的光散乱(DLS)測定の結果より流体力学的粒子径はおよそ200–280 nmであった.一方,これらの水溶液は孔径0.20 µmの酢酸セルロース膜を容易に通過することができた.このことからマグネタイトコアを被覆しているポリマー層が柔軟であることと,無菌的な製剤化が可能であることが判明した.さらに,マウス由来のマクロファージ細胞を用いた毒性評価ではP(VP-MMA-MA)-MNPsの細胞毒性は確認されなかった.最後に,P(VP-MMA-MA)-MNPsの交番磁場照射を行ったところ,ヒステリシス損失に由来する発熱特性が確認された.
  • 玉田 佳子, 山村 浩樹, 寺尾 憲, 佐藤 尚弘
    2012 年 69 巻 7 号 p. 399-405
    発行日: 2012/07/25
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    サケ由来のDNAを超音波照射して分子鎖を切断した塩基対数が60~1100 bpの多分散試料を低塩濃度の水溶液に溶かし,85℃で10分間加熱して変性させた後に冷却し適当な塩濃度に調製してから,多角度光散乱検出器付きサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-MALS)および小角X線散乱測定を行った.得られた一本鎖DNAに対する回転半径の分子量依存性および散乱関数から,みみず鎖(みみず鎖円筒)モデルを用いて,一本鎖DNAのヌクレオチド単位の経路長(らせんピッチ),剛直性を表す持続長,および鎖の太さを見積もった.その結果,一本鎖DNAは典型的な屈曲性高分子電解質と同程度の屈曲性を有するランダムコイル状の分子形態をとるが,局所的には伸び切り状態よりも縮んだらせん形態をとっていると結論した.
  • 佐藤 崇文, 寺本 華奈江, 佐藤 貴弥, 上田 祥久
    2012 年 69 巻 7 号 p. 406-415
    発行日: 2012/07/25
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    合成樹脂など,多くの高分子材料は実際には,構造が複雑な共重合体であり,質量分析によって正確な構造解析を行うには,高い質量分解能と質量精度が求められる.しかし,従来のMALDI-TOFMSでは,質量分解能が不十分であったため正確な分析ができなかった.筆者らは,新たに開発したMALDI Spiral-TOF/TOFを用いて,エチレンオキサイド–プロピレンオキサイドブロック共重合体 (Mn~1,100)の分析を行った.その結果,重合度別の分子量分布測定を行うと同時に,m/z 1,000付近において,0.027 Da差のピークを分離した精密質量測定を行うことができた.また,MALDI Spiral-TOF/TOFは,モノアイソトピックイオンのみを用いた高エネルギー衝突誘起解離によるMS/MS測定が可能であり,これによって得られたプロダクトイオンスペクトルから,フラグメントのシリーズが容易に推定できることを示した.これらの結果から,MALDI Spiral-TOF/TOFはブロック共重合体の分析に有効な質量分析装置であることが示された.
  • 齋藤 悠太, 伊豆田 大樹, 金子 典史, 富樫 大地, 鳴海 敦, 川口 正剛
    2012 年 69 巻 7 号 p. 416-423
    発行日: 2012/07/25
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    ポリ(L-乳酸) (PLLA)の分子特性解析は,クロロホルム(CHCl3)と1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)を溶離液としたサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)およびSEC-多角度光散乱(MALS)測定によって行われた.CHCl3あるいはHFIPを溶離液とした通常のSEC測定からPLLAの見かけの重量平均分子量Mwを求めるとおよそ160~200×103 g mol-1であった.一方,HFIPを溶離液としたSEC-MALS測定から絶対分子量Mwを決定すると75~81×104 g mol-1であることがわかった.この違いはSECで用いられる標準試料とPLLAの単位長さ当たりのモル質量が大きく異なることが原因である.PLLAの分子量測定はHFIPを溶離液に用いたSEC-MALS法が最も適切な方法であると結論された.HFIP中25℃におけるPLLA孤立鎖のz-平均根二乗回転半径⟨S2z1/2の分子量依存性は⟨S2z1/2 (nm)=2.3×10-2 Mw0.60で示されることがわかった.また,25℃,CHCl3およびHFIP中のPLLAの極限粘度[η]の分子量依存性はMw>1×104でそれぞれ,[η] (mL/g)=3.3×10-2 Mw0.74,[η] (mL/g)=4.4×10-2 Mw0.71で表されることがわかった.⟨S2z1/2および[η]からPLLA鎖の特性比Cは11.2±0.7と決定された.PLLA鎖はCHCl3およびHFIP希薄溶液中では典型的な屈曲性高分子であること,排除体積効果によってより拡がったコイルライクな形態で溶存していることが結論された.
  • 吉水 広明, 岡澤 誠裕, 神野 哲史, 浅野 朋子, 鈴木 智幸
    2012 年 69 巻 7 号 p. 424-434
    発行日: 2012/07/25
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    密度がslowly cooled>melt quenched>CO2-conditionedの順に小さな三種のポリフェニレンオキサイド(PPO)試料を調製し,XeおよびCH4収着測定,ならびに種々の 129Xe,1H NMR測定を行った.得られた種々のデータから収着気体の拡散挙動を詳細に評価し,PPOのガラス状態の微細高次構造を議論した.収着等温線と 129Xe NMR化学シフトの解析から,slowly cooled<melt quenched<CO2-conditionedの順に未緩和体積部分が多い,即ち非平衡性が拡大したガラス状態にあることがわかった.NMRスペクトルにおける収着気体のピーク線幅は圧力増加とともに減少した.この変化は,互いに異なる拡散性を呈する二つの収着気体を仮定すれば半定量的に解釈でき,圧力増加とともに収着気体の拡散性が増大する現象を説明できた.この線幅に関する解釈により,拡散性が,slowly cooled<melt quenched<CO2-conditionedの順に増大することも確認された.複数の拡散成分を実験的に確かめる目的で,拡散挙動の観察時間を数百µsにまで短くできる,スピン–スピン緩和時間,T2測定を行った.収着気体のNMR信号強度は単一指数減衰を示し,T2は見かけ上一個の数値として得られた.この見かけのT2の長短と収着実験から得られる見かけの平均拡散係数の大小とは,温度および圧力,ガラス状態の相違,それぞれの観点で定性的によく一致し,収着気体のT2はその拡散性を知る良い指標といえた.一方,T2測定時に得られるスペクトルのピーク線幅は緩和過程とともに減少したので,収着気体のT2緩和の実体は多成分系といえた.言い換えれば,平均拡散移動距離に換算すると数十nm程度に相当する短い観察時間では収着気体の拡散は多成分系である.この拡散挙動から,PPOのガラス状態の微細高次構造は数十nmレベルで不均一なものと推定された.この不均一性の程度は,slowly cooled<melt quenched<CO2-conditionedの順で拡大していた.
  • 藤波 想, 中嶋 健, 西 敏夫
    2012 年 69 巻 7 号 p. 435-442
    発行日: 2012/07/25
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    JKR解析を原子間力顕微鏡フォースディスタンスカーブ測定(フォース測定)と組合せることでヤング率と凝着エネルギーが得られる.ゴムブレンドに対してフォースマッピング測定(フォース測定を試料表面の多点で行う手法)を行い,これを解析することでナノ材料物性の評価を行った.粘弾性が顕著にあらわれる試料では,フォース測定の結果がJKR理論曲線から大きくずれる.このずれを評価することで,凝着の影響を取り除いて粘弾性に起因するエネルギー散逸を画像化できることを示した.フォース測定の走査速度をかえることで,これらの物性が速度依存性をもつことを示した.また,探針を試料表面に押し付けた状態で静止させることで,局所的な応力緩和を測定することができる.これによりミリ秒オーダーでの応力緩和を観測した.この測定手法とフォースマッピング測定を組合せることで,応力緩和の分布を画像化できることを示した.
  • 伊藤 賢志, 陳 喆, 周 炜, 大島 永康, 柳下 宏, 鈴木 良一, 小林 慶規
    2012 年 69 巻 7 号 p. 443-447
    発行日: 2012/07/25
    公開日: 2012/07/25
    ジャーナル フリー
    低速陽電子消滅γ線分光法および低速陽電子消滅寿命法を適用して3種類の市販水処理用複合膜の積層構造および空孔構造を評価し,各複合膜の分離活性層に存在するサブナノスケール空孔と,分子量が同等な中性溶質化合物(尿素,エチレングリコール,1-プロパノール,2-プロパノール)の阻止率との関係を調べた.陽電子3光子消滅率の陽電子照射エネルギーE依存性から,E~1.0 keVにおいて各分離膜の表面に形成された分離活性層に大部分の陽電子が打ち込まれることがわかり,この時のオルト–ポジトロニウム(o-Ps)寿命から空孔サイズを算出した.溶質分子とo-Ps寿命から推定した空孔のサイズ比と各複合膜の阻止率との間には一定の相関があることが示され,陽電子消滅法で解析された微視的空間構造が分子透過に重要な役割をもつことが示唆された.
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