2012 年 69 巻 7 号 p. 406-415
合成樹脂など,多くの高分子材料は実際には,構造が複雑な共重合体であり,質量分析によって正確な構造解析を行うには,高い質量分解能と質量精度が求められる.しかし,従来のMALDI-TOFMSでは,質量分解能が不十分であったため正確な分析ができなかった.筆者らは,新たに開発したMALDI Spiral-TOF/TOFを用いて,エチレンオキサイド–プロピレンオキサイドブロック共重合体 (Mn~1,100)の分析を行った.その結果,重合度別の分子量分布測定を行うと同時に,m/z 1,000付近において,0.027 Da差のピークを分離した精密質量測定を行うことができた.また,MALDI Spiral-TOF/TOFは,モノアイソトピックイオンのみを用いた高エネルギー衝突誘起解離によるMS/MS測定が可能であり,これによって得られたプロダクトイオンスペクトルから,フラグメントのシリーズが容易に推定できることを示した.これらの結果から,MALDI Spiral-TOF/TOFはブロック共重合体の分析に有効な質量分析装置であることが示された.