2013 年 70 巻 12 号 p. 697-703
リグニンを基材とするフェノール系高分子・リグノフェノールの優れたタンパク質吸着能について,これまでは分子構造との関係が検討されてきた.本報では,タンパク質が吸着するのは,凝集により高次構造を形成したリグノフェノール分子集合体,さらにはその凝集体であることに注目し,凝集構造が吸着能に与える影響を検討した.リグノフェノールとして,リグニンにp-クレゾールを導入したリグノクレゾールを,タンパク質としては牛血清アルブミン(BSA)を用いた.微粉化したリグノクレゾールの水中における二次的な凝集はBSA吸着量に影響を与えなかった.一方,物理的なプレスや,異なる貧溶媒中での再沈殿により,BSA吸着量は明確に減少した.リグノフェノールは,分子構造の制御以外に,プレスや沈殿溶媒の選択など簡単な手法で高次構造の制御を行うことができ,それによりタンパク質吸着能などの機能性のコントロールが可能である.