高分子論文集
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70 巻, 12 号
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総合論文
  • 大井 俊彦, 松本 謙一郎, 門屋 亨介, 田口 精一
    2013 年 70 巻 12 号 p. 675-683
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    近年,石油原料から出発してエネルギーや化学品素材を合成するプロセスから,一部バイオマス原料に転換する新たな合成プロセス「バイオリファイナリー」の開発が求められている.バイオエタノールはその典型例であり,当初トウモロコシデンプンなど可食バイオマスが原料として使用されてきたが,食物との競合が問題となり,現在は非可食バイオマスへとシフトしつつある.本報では,微生物によって合成されるポリエステルに焦点を当て,バイオマス原料からポリマー合成までの一貫プロセスの開発に関して紹介する.本プロセスは,反応選択性の高い酵素を搭載した微生物プラットフォームにより,常温・常圧で反応が駆動する環境低負荷型のシステムである.一貫プロセスの開発で最も重要な点は,本プロセスの上流に位置する,植物バイオマスの主成分であるリグノセルロースからの効率的な糖質成分の生成とそれらの微生物ポリマー生産系への橋渡し技術の確立である.
  • 米澤 徹
    2013 年 70 巻 12 号 p. 684-692
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本報では,保護剤として生体関連高分子であるゼラチンを用いた電子部品部材用金属銅微粒子の作製法とその特徴について論じる.ゼラチンは金属ナノ粒子・微粒子の良好な保護剤であることが知られているが,材料,とくに電子部品材料としての応用の観点からはあまり用いられてこなかった.本報では,合成高分子にないゼラチンの特徴を有効に利用した銅微粒子の生成法,そのメカニズムをはじめ,導電性評価,加熱による微粒子の形状変化など,ゼラチンに保護された銅微粒子の全体像について明らかとする.そしてゼラチンの使用が持続可能社会の一翼を担うことを示す.
一般論文
  • 片田 一喜, 豊永 匡仁, 後藤 啓介, 小林 史紘, 千葉 響, 谷池 俊明, 寺野 稔
    2013 年 70 巻 12 号 p. 693-696
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン(PP)系材料の安定性は,高次構造の影響を大きく受けることが知られている.本研究では,顕微赤外分光法によってPP中の球晶構造や無機フィラーが安定化剤の働きや劣化伝播に与える影響について検討した.安定化剤はPPの球晶界面や球晶外部に偏在する傾向が見られ,偏在の規模は球晶サイズが大きくなるほど増加した.一方,劣化の進行は,力学的にも化学的にも弱い球晶界面に集中する傾向があり,球晶サイズが大きくなり界面が発達するほど劣化は加速した.無機フィラーを添加したPPコンポジットにおいては,接合の弱いフィラー/マトリックス界面から安定化剤の揮散が促進され,安定性が大きく低下することがわかった.このように,PP中に存在する界面はいずれも安定化剤の分散性や保持性の低下をもたらし,劣化の起点となると結論される.
  • 野中 寛, 花本 和奏, 舩岡 正光
    2013 年 70 巻 12 号 p. 697-703
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    リグニンを基材とするフェノール系高分子・リグノフェノールの優れたタンパク質吸着能について,これまでは分子構造との関係が検討されてきた.本報では,タンパク質が吸着するのは,凝集により高次構造を形成したリグノフェノール分子集合体,さらにはその凝集体であることに注目し,凝集構造が吸着能に与える影響を検討した.リグノフェノールとして,リグニンにp-クレゾールを導入したリグノクレゾールを,タンパク質としては牛血清アルブミン(BSA)を用いた.微粉化したリグノクレゾールの水中における二次的な凝集はBSA吸着量に影響を与えなかった.一方,物理的なプレスや,異なる貧溶媒中での再沈殿により,BSA吸着量は明確に減少した.リグノフェノールは,分子構造の制御以外に,プレスや沈殿溶媒の選択など簡単な手法で高次構造の制御を行うことができ,それによりタンパク質吸着能などの機能性のコントロールが可能である.
  • 長島 健太郎, 木原 伸浩
    2013 年 70 巻 12 号 p. 704-711
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    4-ビニル安息香酸メチルあるいはアクリル酸メチルとスチレンとの共重合体をヒドラジンと加熱することで,ヒドラジドを側鎖に有するポリマーへと誘導した.この共重合体をoxoneあるいはジアセトキシヨードベンゼンで酸化することによって架橋させた.架橋体は次亜塩素酸ナトリウムによって酸化的に脱架橋され,カルボン酸をもつポリマーを与えた.このポリマーをメチルエステル化することで,元のポリマーを再生した.このサイクルは再び繰返すことができた.
  • 冨永 亜矢, 関口 博史, 中野 涼子, 八尾 滋, 高取 永一
    2013 年 70 巻 12 号 p. 712-721
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    リサイクル樹脂はバージン品と比較して,物性値が劣ることが知られている.従来,この原因は化学劣化によるものと考えられてきた.しかしながら,最近筆者らは,プレコンシューマポリプロピレンが分子物性的に化学劣化していないにも関わらず,成形品の内部構造が大きく異なり,薄膜物性が劣ることを見いだした.また,DSCや紫外線劣化のプロファイルから,この内部構造が成形時に生成したせん断誘起結晶化の影響であり,その結果としてグレイン間を結ぶ接合維持分子の数が減少していると仮定することで,この力学的な物性低下の原因が説明できることを明らかにした.一方これらの結果は物理的な処理により接合分子数を増加させることでリサイクルポリマーの力学特性や劣化特性を改善できる可能性があることを示唆している.今回筆者らはこのプレコンシューマポリプロピレンに対し,種々の熱的な処理を施すことで,バージン品類似の物性値を引き出すことができることを見いだした.これはリサイクル樹脂の高度再処理方法として,有望であると考えられる.
  • 青栁 充, 村井 洸大, 舩岡 正光
    2013 年 70 巻 12 号 p. 722-730
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    相分離系変換システムを用いて誘導したヒノキ(Chamaecyparis obtusa)リグノフェノール(p-cresol type,HCLC)を基材として酢酸エステル(HCLCAc),安息香酸エステル(HCLCPh)ならびにアリル炭酸エステル(HCLCalloc)を誘導し,構造・物性解析をFT-IR,1H NMR,SEC,TGA,TMA,DSCを用いて行った.MwはHCLCより増加し,エステル側鎖の電気的反発と相互作用により差がみられた.TGAの結果,Td5は100℃程度上昇し,安定化の程度を小沢法により定量評価した.TMAの結果,ガラス転移に伴う収縮とゴム状態から溶融状態への変化温度は20–80℃低下した.熱安定効果はDSCでも確認され,発熱ピークは消失しTgが観測された.側鎖構造の異なるエステルにより流動性と熱安定性を付与し,同時に挙動の差異から天然リグニン主骨格の熱的挙動の解明可能であることが示唆された.
  • 岡島 いづみ, 渡邊 佳織, 佐古 猛
    2013 年 70 巻 12 号 p. 731-737
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    亜臨界水加水分解によるナイロン6のモノマー化を試みたところ,350℃,16.5 MPa (飽和水蒸気圧),10分において,ナイロン6の分解率は99.1%,ε-カプロラクタムとε-アミノカプロン酸の収率はそれぞれ69.2%と13.4%に達した.また亜臨界水中ではε-カプロラクタムとε-アミノカプロン酸の間には可逆反応が存在し,およそ10:1の平衡モル比でε-カプロラクタムが多く生成した.さらにε-アミノカプロン酸からε-カプロラクタム以外の副生成物が生成した.これらの結果を基に亜臨界水中でのナイロン6の加水分解の反応経路を推測し,一次反応モデルを用いてナイロン6の分解率,ε-カプロラクタムとε-アミノカプロン酸の収率の反応時間依存性を計算したところ,実測データを良好に表すことができた.
  • 上道 芳夫, 落合 嘉美, 田 幸恵, 山田 誠人, 勝倉 耀平, 神田 康晴, 杉岡 正敏
    2013 年 70 巻 12 号 p. 738-743
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    Gaゼオライト系触媒を用いる低密度ポリエチレン(LDPE)の分解における異種プラスチックの影響について検討した.Gaシリケート(H-GaMFI)はLDPEの分解による芳香族炭化水素の生成に有効な触媒であり,LDPEにポリエチレンテレフタレートが4%あるいはポリスチレンが20%含まれても触媒活性はほとんど変わらなかった.しかし,ポリ塩化ビニル(PVC)やポリアミド(PA)が1%以下の微量でも含まれると,H-GaMFIの触媒活性は低下し芳香族収率が減少した.これに対してGa担持H-ZSM-5ゼオライトは耐塩素性に優れ,微量のPVC存在下でも高活性な触媒であった.さらにPVCとPAが共存すると,PAの影響が抑制されることがわかった.このような高性能ポリオレフィン分解触媒の開発により,微量の異種プラスチックを許容する廃プラスチックの資源循環型ケミカルリサイクルシステムの構築が可能になると考えられる.
  • 野村 信嘉, 長谷川 潤, 岸田 央範
    2013 年 70 巻 12 号 p. 744-752
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    再利用可能かつポリマーが着色しないラセミラクチドのイソタクチック選択的重合触媒配位子として,ホモサレン配位子を市販のMerrifield樹脂に固定化した.まず適当な保護基を有する1,3-ジアミノプロパン-2-オール誘導体を用い,樹脂とカップリング反応を行った後,脱保護後して置換基を有するサリチルアルデヒドと脱水縮合により,固定化ホモサレン配位子を合成した.合成した固定化配位子をトリエチルアルミニウムと反応させ,触媒を調製した.過剰のトリエチルアルミニウムは,触媒調製の溶液部分を取り除くことにより容易に除去できた.こうして調製した固定化触媒を用い,アルミニウムに対して1当量のベンジルアルコール存在下,50当量のラセミラクチドと反応させたところ,イソタクチックポリマーが得られた.重合混合物にメタノールを含むトルエンを加えてろ過すると,配位子と粗生成物を分離することができた.ろ液には生成したポリマーと未反応のモノマーのみ含まれていた.回収した固定化高分子配位子は,再利用することが可能であった.
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