抄録
ジョイント分子としてシロキサン化合物であるテトラメチルシクロテトラシロキサン,ロッド分子としてα,ω-非共役ジエンの1,5-ヘキサジエンを用いた均質な有機–無機複合ゲルを,Ashby-Karstedt触媒を用いて合成した.このゲルを,細孔径4 nmの多孔質γ-アルミナ基材上へコーティングすることで,VOC成分であるトルエン(Tol)の選択透過膜を得た.Tol/N2透過率比850,Tol透過率1.55×10-6 mol m-2 s-1 Pa-1と,非常に高いTol透過選択性をもつ分離膜を得た.この膜の透過機構を,ゲルのクラスター間隙の透過とゲル中の透過の和とすることで,透過モデル式を検討した.このモデル式を用いて,Tolの透過流束のフィッティングを行うことで,ゲルクラスター間隙である間隙割合θが評価できた.この間隙割合θとN2透過性能は相関があることより,Tolの透過実験からN2透過流束評価が可能となった.また,高いTol選択性を得るためには,間隙割合θを0.01以下に制御することが重要であることが示された.