高分子論文集
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総合論文
分子インプリント膜による膜分離
吉川 正和
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2014 年 71 巻 5 号 p. 223-241

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抄録

膜分離において,透過選択性ならびに流束(処理量)は重要な二大ファクターである.目的とする基質に対する分子認識部位を膜内に導入することにより,夾雑物から目的とする標的化合物を基質特異的に分子認識し,選択的に膜内に取り込むことにより,分離膜の透過選択性の向上は比較的容易に実現される.この分子認識部位の分離膜への導入法として分子インプリント法ならびに簡易分子インプリント法がある.取り分け,後者の方法は,高分子材料を直接に分子認識部位をもつ分離膜へと簡便に変換可能な方法である.一方,透過選択性と流束の間にはトレードオフの関係がしばしば観察される.産業界において活躍可能な分離膜を提供するには,透過選択性の向上とともに,ある意味,それ以上に流束(処理量)の向上が必須である.これら二大ファクターを同時に向上させることが適わなくとも,透過選択性を損なうことなく流束を向上させることが要求される.その要求に応える分離膜の膜形態としてナノファイバーファブリックの膜形態がある.エレクトロスプレーデポジションと簡易分子インプリント法を高分子材料に同時に適用することにより創成される分子インプリントナノファイバー膜が少なくとも,透過選択性を損なうことなく流束を向上させることが可能なことが明らかになってきた.本報において,分子インプリント法ならびに簡易分子インプリント法を分離膜の創成に適用することにより得られる分子インプリント膜ならびに分子インプリントナノファイバー膜に関して概観する.

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© 2014 公益社団法人 高分子学会
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