2015 年 72 巻 12 号 p. 737-745
セルロース誘導体であるヒドロキシプロピルセルロース(HPC)に,塩化プロピオニルとクロロギ酸コレステロールの2種類の酸塩化物を用いたエステル化反応を行い,HPC混合エステルを合成した.得られた生成物を1H NMRで測定し,分子構造の定量的な解析を行った.1H NMRの結果から,HPC側鎖に対する官能基の置換度,すなわちエステル化度を算出する方法を提案し,これに従いプロピオニル基とコレステリル基のHPC側鎖への導入量を算出した.これらの官能基を化学修飾したHPC混合エステルは,サーモトロピックなコレステリック液晶性を示した.HPCのヒドロキシ基に対して4.7%コレステリル基を導入し,残りをプロピオニル基で化学修飾したHPC混合エステルについて昇温過程における透過スペクトルを測定したところ,30°Cから80°Cの比較的低い温度においてブラッグ反射が発現し,温度を制御することでブラッグ反射のピーク波長が400 nmから800 nmの全可視波長域でシフトすることを見いだした.