2016 年 73 巻 1 号 p. 1-11
生体分子と有機金属化合物を融合した生物有機金属化合物の機能設計と分子組織化について筆者らの研究結果を概説する.有機金属化合物であるフェロセンにジペプチド鎖を導入した二鎖型のフェロセン–ジペプチド共役分子において,アミノ酸部位の不斉および分子内水素結合に基づく不斉構造規制によって分子全体が不斉構造規制されるとともに,フェロセン部位が不斉誘起されることが明らかとなった.アミノ酸の不斉および配列の制御により,タンパク質の二次構造の形成制御が可能となった.一鎖型のフェロセン–ジペプチド共役分子では結晶状態でらせん状組織体が形成されることを見いだした.核酸塩基としてウラシル部位を有する白金(II)錯体や金(I)錯体では,ウラシル部位の会合特性により金属活性中心が配列制御されることが判明した.グアノシン部位を有する金(I)錯体では,K+イオン存在下,オクタマーが形成され,金(I)–金(I)相互作用に基づく特異発光が観測された.