2016 年 73 巻 1 号 p. 30-41
本報は,三つのアミド結合によって官能基が導入されたグルタミド誘導体の中から,発光性官能基を有する誘導体の機能に焦点を絞り,汎用高分子との複合化および光マネージメント用光学フィルムとしての応用について紹介する.グルタミド誘導体の基本特性の一つは,水素結合を介した分子集合により,中空状やラセン状などのナノ繊維状会合体を形成することが挙げられるが,加えて,ピレニル基やアントラセニル基のような光官能基を含む誘導体の場合は,エキシマー発光かつキラルな円偏光発光に有利な配向状態を優先的に形成することを特徴とする.このような特異な分散形態は,ポリメチルメタクリレートやポリスチレンなどの汎用ポリマー中においても再現することができ,透明機能フィルムとして太陽電池用波長コンバータや円偏光発光フィルターとしての応用展開が可能となる.