2016 年 73 巻 2 号 p. 175-182
コイルド–コイル構造を形成するようアミノ酸配列がデザインされた21量体ペプチドを3本有する分岐ペプチドを新規に合成した.水中での二次構造および自己集合特性をCDスペクトル,AFM,TEMおよびSEMを用いて検討した.三分岐ペプチドの二次構造はpHに強く依存し,とくにpH 5.8のときにコイルド–コイル構造を形成することがわかった.この二次構造形成を駆動力とした自己組織化により,三分岐ペプチドはナノファイバー構造を形成した.また,ヘリックス形成を誘発する2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)の添加効果についても検討した.興味深いことに,TFEを20%添加したときにコイルド–コイル構造の形成が最も促進され,ナノファイバー構造からベシクル様構造に自己組織化構造が変化することがわかった.pHや溶媒組成などの外部環境に依存してさまざまなナノ構造体を形成するユニークな分岐ペプチドの開発に成功した.