2016 年 73 巻 2 号 p. 192-197
外部刺激で内包ゲスト分子を制御放出可能な水溶性高分子会合体は,薬物キャリアーとして注目されている.本研究ではリン脂質の親水部の一つであるホスホリルコリン基を側鎖結合したポリマー(PMPC)と,感温性ポリマー(PDEA)からなる感温性ジブロック共重合体を制御ラジカル重合法で作製した.PMPCは免疫系から異物認識されにくく,温度に依存しない水溶性高分子である.PDEAは下限臨界溶液温度(LCST)より高い温度で疎水性を示すため,ジブロック共重合体は水中でPDEAをコア,PMPCをシェルにもつミセルを形成した.ミセル表面は,生体親和性のPMPCで覆われている.LCST以下の温度で,PDEAブロックが親水性に変化するため,ミセルは解離した.この会合状態の変化する温度(CAT)より高い温度で,疎水性分子をPDEAコアに取込めた.一方,CAT以下の温度で疎水性分子を水相に制御放出できた.