2017 年 74 巻 6 号 p. 517-523
本研究では,導電性高分子膜の作製条件がその膜を構成要素とする酵素電極によって得られる酵素触媒電流に及ぼす影響とその要因について調べた.導電性高分子膜は3-メチルチオフェンとチオフェン-3-酢酸の電解共重合により作製した.酵素電極は重合膜の表面への共有結合を介したグルコースオキシダーゼの固定化により作製した.酵素触媒電流の測定はグルコースおよびp-ベンゾキノンを含むリン酸緩衝液(pH 7.0)中で行った.重合溶媒の変更により,酵素触媒電流の大きさは最大で7.2倍変化した.モノマー濃度に対して,酵素触媒電流は0.25から1.0 Mの至適範囲を示した.重合電圧の増加に付随して重合電流は増加した.一方で,酵素触媒電流はプラトー領域を示した.膜の微細構造の変化が酵素触媒電流に対する電解重合条件の影響のおもな要因と考えられた.