2018 年 75 巻 1 号 p. 48-53
筆者らは,カルボニル基をメチレン基に変換するPetasis試薬を用いることで,ポリカプロラクトン(PCL)のエステル基の一部を直接メチレン化できることを見いだした.合成したメチレン化PCLには,その後のチオール–エン反応によってカルボキシ基,アミン塩酸塩およびヒドロキシ基の導入ができた.得られた官能基化PCLを示差走査熱量測定したところ,メチレン化PCLは原料のPCLよりも結晶融解温度は低下したが,カルボキシ基,アミン塩酸塩およびヒドロキシ基を付加することで上昇し,原料PCLと同等以上の結晶融解エンタルピーを示した.官能基の導入後も原料PCLと同程度の分子量や結晶融解エンタルピーなどの性質を維持しており,バイオコンジュゲートの設計あるいはサイトカインや細胞との親和性を向上させた再生医療用足場材料へ応用できると考えられる.