2018 年 75 巻 2 号 p. 174-186
温度応答性高分子を材料表面に固定化した温度応答性表面は温度変化によって表面の親・疎水性が変化する.温度応答性表面を細胞培養基材として利用した温度応答性細胞培養表面は温度変化で細胞の接脱着能を制御し,細胞をシート状で回収する表面として注目を集めた.温度応答性細胞培養表面の研究を通じ,固定化する温度応答性高分子のナノスケール化が細胞の接脱着能発現に重要であることが示された.本報では,温度応答性細胞培養表面に焦点を当て,温度応答性表面の創生から基材表面に固定化した温度応答性高分子のダイナミクスと表面物性との相関,さらには温度応答性細胞表面における固定化高分子のナノスケール化の重要性について紹介する.また,これまで困難とされてきた,温度応答性細胞培養表面からの細胞接着・剥離過程の定量的評価技術や,近年,細胞シートを作製するために必要な温度応答性細胞培養表面の簡易的な作製技術についても紹介する.