高分子化學
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オキシセルローズの酢化について
藤村 敏一
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1955 年 12 巻 123 号 p. 315-321

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抄録

パルプの酢化におけるウロナイドなどの効果を見るため, 過酸化窒素により酸化したリンターを用いてCOOH基の影響を檢討した結果,(1) COOH基を入れるほど酢化度のみならず, 全置換度も低下し, 酢化が妨げられ, 生成物の溶解度も低下し, エステル架橋が考えられる。(2) 生成物の酢化度に最も影響するのは前処理方法で, 酢化温度, 酢化時間, 無水酢酸 (酢化浴中の) 増加も効果がある。(3) 生成物中のCOOH基が増すごとく見えるのは硫酸エステルの副生により酸性を増した結果に基く外見上のものと思われる。(4) 牧率は煮沸前処理した場合, オキシセルローズ中のCOOH基を高めた場合, 酢化浴中の硫酸を増した場合低下するが, これはオキシセルローズの解重合が原因と考えられる。(5) オキシセルローズ酢化物はピリジン, 酢酸などに比較的溶けるが完溶はしない。これから見てオキシセルローズの存在は酢酸繊維素ドープの溷濁の原因となることが考えられる。(6) オキシセルローズ酢化物がクロロホルムよりアセトンに比較的溶けるのは, 極性の変化のほかCOOH基, 從ってアセチル基の分布が均一であることに基づくと思われる。前処理, 酢化時間, 酢化温度, 熟成條件の変化による溶解度の増加は解重合と関係があると思われる。

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