抄録
アイソタクチックポリプロピレンのα, β およびγ変態結晶から構成される球晶の微細組織を検討する目的でそれぞれの球晶を適当な条件下で2次元的に溶融成長せしめ, その表面組織をレプリヵ法により電子顕微鏡で観察した。α変態結晶から成る球晶は大部分がその半径方向に結晶の〈a〉軸をそろえて優先成長するLath型のラメラ結晶と切線方向に成長する結晶とから構成される。β変態結晶を含む球晶はいくつかの核の形成によるらせん成長をしたこの変態特有の葉状構造を示し, 球晶を構成する個々の幅広いラメラ結晶は, らせん核からねじれながら球晶外辺に向って発達していることが観察された。またβ変態ラメラ結晶がらせん成長をするということから, 従来提唱されているこの変態の結晶構造モデルは再検討されるべきであることが示唆された。一方, 熱分解により低分子量化した試料からは形状のととのった球晶は得にくいが, α 変態結晶のそれと全く類似した形態のγ変態ラメラ結晶が成長し, 同時に分子鎖が折りたたまれていないことに起因して, 極端にbroadなラメラ結晶の成長することも観察された。