高分子化學
Online ISSN : 1884-8079
Print ISSN : 0023-2556
ISSN-L : 0023-2556
〔24〕 合成および生体高分子電解質溶液の二三の溶液性状
伊勢 典夫大久保 恒夫
著者情報
ジャーナル フリー

1970 年 27 巻 300 号 p. 193-210

詳細
抄録

合成および生体高分子電解質希薄水溶液の物理化学的研究の現状について総説を試みた。溶質の平均活量係数 (γ) が, 低分子電解質の場合と異なり, 立方根則に従うことが指摘され, その原因が非常に強い逆イオン-高分子イオン間の引力に基く巨大イオン-巨大イオン間の引力によるものであることが推察された。また, 逆イオンの単独イオン活量 (または活量係数) を実験的に決定する場合の液間ポテンシャルに関する仮定が, 高分子電解質溶液においては妥当でないことが指摘された。これよりたとえば電圧滴定実験より得られる結論が十分注意して評価されねばならないことがわかる。さらに三成分系でのγの測定より第2ビリアル係数を得たが, 他の方法により求めた値とよい一致を示した。また, γの圧力依存性を示す部分モル容積の測定により, 種々の高分子イオンの水和数を決定し, 電縮による水和と疎水性基周辺の氷状構造形成による水和とに分けて議論した。高分子周辺の氷状構造形成により, 炭化水素類の水に対する溶解度に影響があるものと推察されるが, 事実高分子添加によりナフタリンの可溶化が認められた。輸率の測定から, 逆イオン固定が高分子イオンの水和殻の外側において起こることが推定された。最後に同符号イオン間の反応に対し高分子電解質が顕著な加速効果を有することがわかったが, この現象は高分子触媒の添加に伴うエネルギー的要因に由来するものであり, 通常考えられているような反応イオン種間の衝突因子の増大によるものでないことが示された。この結論はDNA, RNAの触媒作用に関連して興味深い。

著者関連情報
© 社団法人 高分子学会
次の記事
feedback
Top