1976 年 33 巻 9 号 p. 509-518
新しく誘導したジエトキシエチルトリメチルアンモニウムによる部分アセタール化ポリビニルアルコール (PN) と部分硫酸化ポリビニルアルコール (PS) とのイオン結合による複合体形成について, 主として濁度測定法により調べた. (1) PNとPSの混合比の関数として示された混合液の濁度に関する曲線の極大点 (または形成された複合体が沈殿する場合は極小点) に対応する混合比は, pHに無関係で, かつ混合時におけるかきまぜの影響もなく化学量論的当量に等しいことが分かった. (2) またその混合比で形成された複合体の組成も, やはりその当量に等しい. (3) かきまぜを行いながら添加塩 (NaCl, CaCl2) 存在下で複合体形成を行うと, 濁度と添加塩濃度との関係曲線は, 一般に混合比に関係なく初め添加塩濃度の増大とともに増加し極大点に達する. 添加塩濃度が更に大きくなると, その遮へい効果により複合体形成が抑制され濁度は減少し, 0となる. これらの現象の機構について検討した. (4) dimethyl sulfoxideなどの有機溶媒が複合体形成を抑制するのに効果のあることを見いだした.