高分子多孔膜中の気体の流れ機構を明らかにするために, 1次の平均孔径 (r1) が0.75~0.035μmの範囲の円筒状孔を持つ多孔膜の気体透過係数P (P1, P2) (P1, P2は多孔膜面の圧力, P1≧P2) と孔径頻度分布関数N (r) との関係, およびP (P1, P2) に及ぼす透過気体の化学構造の影響を検討した. 毛細管 (直径2r) 内の気体流れは, 2r≦λのとき (λは気体の平均自由行程) には自由分子流れ (F流れ) のみで, 2r>λのときには粘性流れとスリップ流れとが混在する流れ (V流れ) で近似できる. また2r=λを漢足する圧力をP0とするとP2≦P0<P1の条件下では毛細管入口付近ではV流れ, 出口付近ではF流れが起こると仮定すれば, P (P1, P2) の実測値は計算値と一致する. 無機分子気体について, 実測されたP (P1, P2) のP1, P2, N (r) , λ依存性は, 既報 (高分子論文集, 34, 729 (1977)) で提出した理論式によって説明できる. しかし, 2r1=0.035μmの高分子多孔膜でF流れが起こる条件下での有機分子気体のP (P1, P2) の実測値は理論値よりも大きい. この差は気体の沸点が高いほど大きく, 膜素材と気体との間の相互作用に関連した透過 (表面拡散など) の寄与が無視できないためと推論される.