1981 年 38 巻 12 号 p. 815-819
純水中における塩化第二鉄の光還元反応の量子収率 (Φ) は極めて小さいが, ポリビニルアルコール (PVA) やイソプロピルアルコール (i-PrOH) の添加によりΦは薯しく増大した. Φの値はPVAやi-PrOHの添加量の増大に伴い増加するが, 大過剰の添加物存在下ではほぼ一定の値になった. PVA存在下でのΦの値が, i-PrOH存在下のそれよりも若干小さいのは, 光還元反応の初期過程で生成する塩化第二鉄めリガンドラジカルのPVAからの水素引き抜き反応に対する立体障害によるものと考えた. 塩化第二鉄が水酸化鉄の不溶物を生成しないような酸性域では, PVAあるいはi-PrOH存在下でのΦは反応系のpHに依存し, ΦはpH2付近で最大値を示した. このようなΦのpH依存性は, 系のpH変化に伴う第二鉄イオンの配位子の変化によるものと考えた. Φの値はまたPVAの重合度に依存した. 光反応後のPVA試料には不飽和カルボニル基の存在を認めた.