抄録
医用高分子材料の生体適合性に及ぼす脂質の役割を解析するために, 材料としてポリジメチルシロキサン, 脂質として卵黄レシチンとコレステロールより成るリポソーム, 細胞として血小板をそれぞれ選び, (I) 材料-脂質間相互作用, (II) 脂質-細胞間相互作用, (III) 脂質吸着表面-細胞間相互作用を, 脂質の荷電バランスに注目して検討した. その結果, 以下のことが明らかになった. (1) 脂質は高分子材料に対して, 浸透あるいは積層吸着し, 初期の飽和吸着に達しない. (2) 血小板は正荷電を有するリポソームに対してのみ緩やかな凝集を起こし, また, いずれのリポソームとの相互作用によってもATPを放出しない. (3) 脂質を吸着した表面が血小板に与える影響は, 脂質そのものの性質が反映する. (4) 荷電を変化させた脂質を吸着した表面と, 血小板との相互作用の程度は, 正荷電表面>負荷電表面≥中性荷電表面の順に強い.