高分子論文集
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ポリスチレン皮膜の気体透過性に及ぼす紫外線照射の影響
山田 純男仲川 勤
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1982 年 39 巻 6 号 p. 391-398

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抄録

ポリスチレンフィルムの空気中紫外線照射が気体の透過性及び拡散性へ及ぼす影響を調べた. 未照射ポリスチレンと紫外線照射ポリスチレンフィルムへの, 水素, ヘリウム, 二酸化炭素, 酸素, アルゴン, 窒素の10~60℃における透過係数と, 20℃における拡散係数を測定した. 紫外線照射量が増加するとともに, 気体の透過性と拡散性は著しく減少した. 38時間照射を行ったとき各気体の透過係数の減少率は拡散係数のそれにほぼ等しく, 水素とヘリウムの透過係数は未照射の場合の4/5~3/5に, 二酸化炭素, 酸素, アルゴン, 窒素のそれは約1/10に減じた. またこのときの水素及びヘリウムの窒素に対する透過係数比は, それぞれ1, 159と678であった. 各気体について照射時間に対する透過係数の減少率と, フィルム中のゲル含有率の増加率がよく対応し, また密度が照射時間とともに増加した. これらの結果から, 照射による透過性と拡散性の減少は, 紫外線によってフィルムの表面層に密に生成した橋かけ構造による, 自由体積の減少に基づくものと解釈される. また照射時間とともに, 1, 740cm-1の赤外吸収強度と340nmの着色量が増大することから, 橋かけ構造の生成と同時に C=O構造と共役二重結合の生成も平行して起こっているものと考えられる.

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