抄録
親水性高分子であるポリビニルアルコールフィルム (PVA) を用い, これをカルボン酸クロリド (CnH2n+1COCl, n=2, 4, 6, 8および10) の蒸気中で表面改質した. 改質されたフィルム表面の性質を, さまざまな有機液体の接触角の測定から得た臨界表面張力より評価した. その結果, 疎水性の傾向は, アルキル鎖長とともに増加した. また, 改質されたPVA表面の疎水化状態をより明らかにするために表面張力成分を求めた. この中で, どのカルボン酸クロリドを用いても, 分散力成分は増加し, 一方, 水素結合成分は減少した. この分散力成分の増加は, 疎水基の長さに依存する事がわかった. しかし, 60℃の実験温度以上ではC10H21COClによって改質されたPVA表面は破壊される. 従って, 気相法によるカルボン酸クロリドのPVAの表面改質においては, C3H17COClで改質したものが最も疎水化された.