高分子論文集
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42 巻, 12 号
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  • 京谷 裕子, 三橋 重信, 井口 正俊
    1985 年 42 巻 12 号 p. 849-856
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    超高分子量ポリエチレンゲルフィルム (0.2~50wt%のデカリン溶液またはプレンドから作成) を延伸し, その微細構造と融解挙動を走査型電子顕微鏡 (SEM) と示差走査熱量分析 (DSC, 特に固定端法) により検討した. 自由端フィルムの融解には1個, 固定端の場合には2個の吸熱ピークが観測された. この2個のピークのうち高温側ピークの吸熱面積の分率は, ゲル調製溶液濃度, 延伸比, 延伸条件により変化し, 更に延伸性や弾性率とも関連がみられた. 高温側のピークは低温側ピークに比べ大きな昇温速度依存性を示した. この2種の融解ピークに対応する高次構造がSEMで観察した部分融解フィルムやX腺回折より認められた.
    この高次構造のうち, 一つは分子鎖が優先的にunfoldして形成されるネットワーク組織であり, 他の一つはネットワーク組織が形成されたためにunfoldingがより不十分な部分であるとみられる.
  • 荻野 圭三, 大塚 俊之
    1985 年 42 巻 12 号 p. 857-863
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    親水性高分子であるポリビニルアルコールフィルム (PVA) を用い, これをカルボン酸クロリド (CnH2n+1COCl, n=2, 4, 6, 8および10) の蒸気中で表面改質した. 改質されたフィルム表面の性質を, さまざまな有機液体の接触角の測定から得た臨界表面張力より評価した. その結果, 疎水性の傾向は, アルキル鎖長とともに増加した. また, 改質されたPVA表面の疎水化状態をより明らかにするために表面張力成分を求めた. この中で, どのカルボン酸クロリドを用いても, 分散力成分は増加し, 一方, 水素結合成分は減少した. この分散力成分の増加は, 疎水基の長さに依存する事がわかった. しかし, 60℃の実験温度以上ではC10H21COClによって改質されたPVA表面は破壊される. 従って, 気相法によるカルボン酸クロリドのPVAの表面改質においては, C3H17COClで改質したものが最も疎水化された.
  • 伊藤 精一
    1985 年 42 巻 12 号 p. 865-874
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    アクリロニトリル/酢酸ビニル共重合体 (93/7重量比) のための低水/モノマー比における連続重合に適した動力学的モデルが得られた. モデル式は過硫酸カリウム/亜硫酸水素ナトリウム/鉄系レドックス開始剤により水/モノマー比4.0より1.75の範囲で上記共重合体のための重合実験結果と比較された. 各水/モノマー比ごとの重合率とポリマー比粘度の解析結果, 50℃において以下の諸定数を得た. kp/kt1/2=45~84 (l/mol・h) 1/2, ktr/kp=4.00~4.37×10-2 (Table5参照). 文献よりの計算値はkp/kt1/2=62.3である. この重合はポリマーを除外した水相で起るものとして導かれた本モデル式は水/モルマ-比4.0では実験結果に対する適合性やや不十分であるが, 1.75より3.0の水/モノマー比では良好で重合挙動をよく説明できた.
  • 山口 貞充
    1985 年 42 巻 12 号 p. 875-880
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリテトラフルオロエチレン (PTFE) 樹脂は溶融状態でも流動しないため, 溶融状態での形態に興味がもたれる. 本論文ではPTFE樹脂の結晶化開始温度近傍での表面形態を鉛でレプリカすることによって観察した. その結果, 幅約0.12μm長さ約0.3μmの小さな帯が観察され, 成長途中の帯を見いだすことができた.
  • 穂積 啓一郎, 北村 桂介, 北出 達也, 吉村 菊子
    1985 年 42 巻 12 号 p. 881-890
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    固体材料上に高親水性コーティング膜を施す目的で, グロー放電により二三の脂肪族不飽和アルコールをモノマーとして, 含酸素プラズマ重合物を作成した. 2-propyn-1-ol (propargylalcohol, PA) は得られた重合膜の酸素含有量が多いことから, 最も有望なモノマーであることがわかった. この酸素含有率は水蒸気の共存下でプラズマ重合させれば更に増加し, これにより重合膜の親水性は一層向上した. 含水PAは液相とほぼ同じ組成の蒸気を供給したので, 既知濃度の含水PAをモノマー物質に用いた. モノマー中の含水率を0%から80%まで変えると, 重合物中の酸素含有率は25%から40%まで増加し, 一方接触角は45゜から18゜まで低下した. 重合物のIRスペクトルはOH, C=O, C=Cの存在とモノマーのC≡Cの顕著な消失を示した. PA及び60%含水PAから得られた重合物の溶媒抽出物の数平均分子量から, それぞれの化学式はC26H36O9=490とC44H66O18=890とわかった.
  • 赤名 義徳
    1985 年 42 巻 12 号 p. 891-897
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ4-メチルペンテン-1 (P4MP) の熱分解による分子量と分子量分布の変化を, 元の分子量の異なる三つの試料を用いて調べた. 熱分解により分子量分布は狭くなるが, 元の分子量の大きいものほど同一分解度 (α) における分子量分布はより狭くなる. キャピラリーレオメーターでレベルの異なる二つのずり応力で測定した溶融粘度の比 (η12) 熱分解と共に小さくなり, 非ニュートン性が低下することが分かる. 熱分解後のη12と極限粘度 ([η]) の関係をη12=1へ外そうすることにより, [η] =0.3dl/gが求まり, これよりP4MPの臨界分子量 (Mc) 8,700が得られた. これ以下の分子量をもつP4MPはニュートン性を示すと思われる. 元のP4MPと熱分解後のP4MPの分子量, 分子量分布, η12の間には一定の関係が存在する. この関係に従えば, 熱分解によるP4MPの分子構造制御が可能であると思われる.
  • 鎌形 一夫, 吉田 修二, 木下 雅士
    1985 年 42 巻 12 号 p. 899-904
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジン (VT) とイソシアヌール酸の分子間化合物を合成し, エポキシドとの反応性についてIRスペクトルを用いて研究した. 分子間化合物とビスフェノールAのジグリシジルエーテル (DGEBA) を150℃に加熱すると, エポキシドはVTのアミノ基及びイソシアヌール酸と反応した. エポキシドに基づく吸収の消失はVTとDGEBAの場合より速く, イミダゾール化合物を加えると一層速くなる. 硬化物中ではイソシアヌール酸はエポキシドと反応してイソシアヌラート及びオキサゾリドン化合物の形で存在することがIRスペクトルから推定された. 2,4-ジアミノ-6-エチル-s-トリアジンとイソシアヌール酸の分子間化合物はVTの分子間化合物と同様にエポキシドと反応するが, メラミンの分子間化合物ではエポキシドとイソシアヌール酸の反応はほとんど見られなかった.
  • 近江谷 克裕, 河端 俊彦, 金井 伸人, 黒田 清宏, 小林 純一, 神戸 博太郎
    1985 年 42 巻 12 号 p. 905-907
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高分子物質の力学的性質を探る上で, 応力緩和の測定は重要な方法である. 本研究では応力緩和測定のデータ処理について簡易化を図るために, マイクロコンピュータの使用を検討した. 処理システムはロードセルからの出力を日本合成ゴム社 (株) 製ログタイマーによりデジタル変換した後, マイクロコンピュータによって解析する方法と, A/D変換によりマイクロコンピュータで直接解析する方法の2通りであるログタイマーを使用することで早期からの正確な測定が可能である. また, 直接のマイクロコンピュータ処理では従来よりも更に簡易化は図れるが, 測定精度には問題がある.
  • 中山 和郎
    1985 年 42 巻 12 号 p. 909-912
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    硬質プラスチック板の動的弾性率を曲げモードによって測定する方法を提案する. 両端支持曲げ方式 (A) と, 3点単純曲げ方式 (B) の二つの方法が動的測定に応用可能であった. 実験精度を良くするための測定の手順と測定条件とを検討した. 動的曲げ弾性率の温度依存性を測定するには, A方式よりB方式の方が便利であった. 測定治具 (B方式) を取り付けた動的粘弾性測定装置により, FRP (炭素繊維充てんエポキシ樹脂) の動的曲げ弾性率と損失正接, tanδを-150~250℃の広い温度範囲にわたって測定することができた.
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