高分子論文集
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高張力下熱処理ポリエチレンテレフタレート (PET) 繊維の力学的性質と高次構造
功刀 利夫鈴木 章泰對木 哲也
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1991 年 48 巻 11 号 p. 703-710

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抄録

本研究では, ゾーン熱延伸PET繊維のいっそうの高強度・高弾性率化を目的として高張力下熱処理を行った. この処理は, 100℃での切断強度の95%という極めて高い張力下で行った. ゾーン熱延伸を3回施したZD-3繊維は7.2倍まで延伸され, 引き続いての高張力下熱処理でさらに延伸倍率は7.5倍になる. 複屈折は, ZD-3繊維では0.25, 高張力下熱処理を施すことで0.279に達する. この複屈折は従来報告されている結晶固有複屈折以上の極めて高い値である. また, ZD-3繊維の結晶化度は58%, 高張力下熱処理後でも59%とほとんど増加せず, 結晶化度は実質的には変化しない. これら繊維の結晶部配向係数はいずれも1に近く, 結晶性及び結晶配向性などには顕著な差異は認められない. 一方, 非晶部配向係数はZD-3繊維での0.646から高張力下熱処理繊維での0.854まで向上した. この高張力下熱処理繊維のヤング率は30GPaに到達し, ZD-3繊維の1.5倍となる. また, 引張強度は1.7GPaに達し, 高張力下熱処理がゾーン熱延伸繊維のいっそうの高強度・高弾性率化を可能にした.

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© 社団法人 高分子学会
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