高分子論文集
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48 巻, 11 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 海藤 彰, 中山 和郎
    1991 年 48 巻 11 号 p. 663-670
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリエーテルエーテルケトン (PEEK) の結晶性及び非晶性のシートをロール圧延やロール引抜きにより変形させ, 得られたシートの力学的性質や分子配向について調べた. 結晶性のシートの場合, 延伸比の増加に伴い, 変形方向の力学的性質が向上し, 延伸比, 3.8において, ヤング率9.9GPaのシートが得られた. 一方, 圧延シートの幅方向の力学的性質は, 圧延によりあまり大きな影響を受けなかった. ロール圧延やロール引抜きにより結晶c軸や非晶鎖が変形方向に配向するとともに, (100) 面がシート面に配向した. 非晶性シートのロール引抜きの場合は, 加工条件を変えても, 延伸比は2.8~3.1の狭い範囲に留まった. 非晶性のシートの場合は, 引抜き過程で配向結晶化が起こり. 結晶化度と複屈折は, 引抜速度が速いほど大きくなった.
  • 坂本 國輔
    1991 年 48 巻 11 号 p. 671-678
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    テンター法による2軸延伸フィルムは光学的に不均一であるため, その特徴を解明することを目的として, 市販のポリエチレンテレフタレート (PET) フィルムの複屈折率や分子配向の方向及び面配向を測定し, その特徴を明かにした. すなわち, フィルムの幅位置に対する複屈折率は, 中央部に極小値を持ち, 端に位置するほど増加する. その極小値が0でない場合のパターンは, 下向きに凸の曲線になり, 0の場合は直線的に増加する. したがって, 延伸をテンター法で行う限り, フィルムの複屈折率が0になるのは, 実質的な縦横の延伸バランスが完全にとれた時, しかもフィルムの中央部分にしか存在しないことになる. 一方, 面配向は位置に関わらず一定値を示した. この現象の発生機構を解明するために「屈折率楕円体が延伸に比例して変形する」という仮定のもとに横延伸工程に関する理論をたてた. 理論計算の結果は定性的に細部にわたって実験値と良く一致した.
  • 中山 和郎, 海藤 彰
    1991 年 48 巻 11 号 p. 679-684
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリオキシメチレンシートの150℃での圧延を試みた. 圧延の際に, 前方張力 (引取張力) を付加して, 安定な圧延を行うことができた. 前方張力は圧下力や圧延倍率に影響し, 前方張力を高くすると, 圧下力が低下した. 圧延したシートの力学的性質と圧延条件の関係を調べた. 圧延倍率が高くなると, 弾性率と引張強さが向上した. さらに, 高圧延倍率ではシートの透明性が著しく向上した.
  • 鶴田 明治, 薄木 理, 田中 真司
    1991 年 48 巻 11 号 p. 685-690
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    球晶形態が異なる3タイプのポリフェニレンスルフィド (PPS) フィルムを室温で延伸し, 応力-歪挙動とモルホロジー変化を調べた. 試料は, 成形条件を変えて以下の3タイプを調製した. タイプI: 球晶サイズが大きく球晶数が少ない. タイプII: 球晶サイズが小さく球晶数が多い. タイプIII: 球晶が未発達で完全な球晶構造を取らない. 球晶が大きく数が少ないほど, 延伸応力は比較的高い結晶化度 (20%付近) まで増大せず, 高い破断伸びを示した. 一方, 球晶構造が不完全な試料では, 結晶化度の増加に比例して延伸応力が増大し, 破断伸びは急激に低下した. 延伸による変形は主に球晶間の非晶領域で進行し, 非晶分子鎖の配向度の増加が見られた. また, 動的粘弾性測定において非晶分子鎖の運動性が各タイプにより異なることが分かった. 以上の結果から, PPSの室温での延伸挙動は結晶化度, 球晶サイズ, 及び非晶鎖の拘束度により著しい影響を受けることを明らかにした.
  • 松沢 秀二, 孫 連徳, 山浦 和男
    1991 年 48 巻 11 号 p. 691-697
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    2, 2'-アゾビス (2, 4-ジメチルバレロニトリル) を開始剤として40℃でトリフルオロ酢酸ビニルを重合後, 重合物をジエチレントリアミンで脱トリフルオロ酢酸化し, s- (diad) =57%のシンジオタクチシティに富む高重合度ポリビニルアルコール (s-PVA, DP=7900及び12600) を得た. 水-DMSO=2: 8 (体積比) の混合溶媒を用いs-PVAのゲル紡糸 (ポリマー濃度3.5g/dl, ノズル内径0.8mm) を行った. この繊維の最高延伸倍率 (230℃) は約14倍であった. DP=7900のs-PVAから作ったゲル繊維の結晶化度は30%で, 複屈折率2.0×10-3であったが, 12倍延伸物の弾性率は30GPa強度は1.9GPaで, 結晶化度は70%, 複屈折度は5.0×10-2であった. なおDP=17900の市販PVAを用いて同様な条件で紡糸したゲル繊維の13倍延伸物 (220℃) の弾性率や破断強度は, それぞれ18GPa及び1.3GPaであった.
  • 中村 勉, 吉野 正親
    1991 年 48 巻 11 号 p. 699-702
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    近年多くの加工メーカーがシリコーンゴムの成形を自動化し, 高速化を図るための方法として射出成形を検討し採用している. 成形金型内を硬化反応しながら流れるシリコーンゴムの流動特性を知ることは, シリコーンゴムの成形上重要である. 本報告ではスパイラルフロー金型内を流れるシリコーンゴムの速度及び圧力を測定し硬化特性との相関を明らかにした. スパイラルフロー上の圧力センサーによりシリコーンゴムの硬化に伴う圧力の上昇測定された. この変化点はゴムの硬度変化と相関があり, 著しく硬化反応が進行している領域であることが確認された.
  • 功刀 利夫, 鈴木 章泰, 對木 哲也
    1991 年 48 巻 11 号 p. 703-710
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本研究では, ゾーン熱延伸PET繊維のいっそうの高強度・高弾性率化を目的として高張力下熱処理を行った. この処理は, 100℃での切断強度の95%という極めて高い張力下で行った. ゾーン熱延伸を3回施したZD-3繊維は7.2倍まで延伸され, 引き続いての高張力下熱処理でさらに延伸倍率は7.5倍になる. 複屈折は, ZD-3繊維では0.25, 高張力下熱処理を施すことで0.279に達する. この複屈折は従来報告されている結晶固有複屈折以上の極めて高い値である. また, ZD-3繊維の結晶化度は58%, 高張力下熱処理後でも59%とほとんど増加せず, 結晶化度は実質的には変化しない. これら繊維の結晶部配向係数はいずれも1に近く, 結晶性及び結晶配向性などには顕著な差異は認められない. 一方, 非晶部配向係数はZD-3繊維での0.646から高張力下熱処理繊維での0.854まで向上した. この高張力下熱処理繊維のヤング率は30GPaに到達し, ZD-3繊維の1.5倍となる. また, 引張強度は1.7GPaに達し, 高張力下熱処理がゾーン熱延伸繊維のいっそうの高強度・高弾性率化を可能にした.
  • 松本 喜代一, 斉藤 浩行
    1991 年 48 巻 11 号 p. 711-717
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリアミック酸のドープから製膜するときに, 水分なしに保持することは通常容易でない. ポリアミック酸から調製するカプトン型とユーピレックス-S型の2種類のポリイミドについて, これらのドープの微量水分によって誘起される加水分解の速度を測定した. 水分なしあるいは1 vol%の水分を含有するドープについての重合度, 時間, 及び温度の関係は, log [(1/P) - (1/P0)] t-n=(A/T)+Bのアルレニウス型の関係式によく一致した. それから, 水分なしあるいは1 vol%の水分を含有する2種類のポリアミック酸のドープについての加水分解における見掛けの活性化エネルギーは, 水分なしについては16~17kcal/mol, そして1 vol%含水率については18~20kcalであった. フィルム製膜用の濃厚なドープは, いずれもビンガム流動を示した. 水分なしあるいは水分1 vol%含有のドープの粘度は, ポリアミック酸の重合度の増加に伴って増大した.
  • 氏家 誠司, 飯村 一賀
    1991 年 48 巻 11 号 p. 719-724
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    アンモニウムイオン基を構成基とするポリエチレンイミン系及びイオンコンプレックス系のイオン性高分子液晶を合成し, それらの熱的性質及び配向特性について調べた. またアンモニウムイオン基をもつモデル低分子液晶も合成して比較検討した. 合成したイオン性高分子液晶及びモデル低分子液晶はすべてエナンシオトロピックなスメクティック相を示した. アンモニウムイオン基の導入はスメクティック相の熱安定性を向上させ, 垂直配向構造の自発的形成を促進させることが明らかとなった. 液晶相において自発的に形成された垂直配向構造は固体状態で保持された. 垂直配向試料のX線回折測定から, スメクティック層内ではイオン性基部分及びメソゲン基部分はそれぞれ分離して凝集状態を形成することが見いだされた. イオンコンプレックス系においても安定なスメクティック相が形成されることから, イオン結合を用いた機能複合系液晶の構築が可能であることがわかった.
  • 伊藤 慶子, 井上 正巳, 森安 雅治
    1991 年 48 巻 11 号 p. 725-735
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    構造の異なる数種の高分子材料に, 波長193~1064nmの6種の短パルスレーザを照射し, これらの加工形状, 除去深さ, 及び除去に必要なエネルギー密度から材料や波長を変化させたときのアブレーション特性を考察した. その結果, 特性を大きく支配するのは波長ごとに決まる材料の光吸収係数と, 比熱や気化開始温度などの熱特性であることがわかった. シャープで周辺に損傷のない高品質な加工形状は光吸収係数が104cm-1程度以上のとき得られ, 光子エネルギーの高い遠紫外レーザでも102cm-1程度では得られない. またアブレーションのしきい値エネルギー密度を与えたとき極表面に供給されるエネルギーは, 材料を気化開始温度まで上昇させるためのエネルギーと良い相関関係があり, 反応機構においてレーザエネルギーが熱に変換される光熱作用が支配的であることが示唆された.
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