抄録
本研究はピリミジン塩基であるウラシル (U) とチミン (T) を固定化した架橋ポリスチレン樹脂を合成し, これを充填剤としてアデノシン (A) とグアノシン (G) の混合溶液から吸着クロマトグラフィーによって両物質を分離することを目的とする. バッチ法による等温吸着を行った結果, この樹脂のAに対する吸着は化学吸着であることを明らかにした. さらにカラム法でどのような吸着条件が高い選択性を示すか検討した. 空間速度の影響は本実験条件下ではあまり認められなかった. 架橋度の低い樹脂のほうがU含量が多く, また樹脂の含有U当たりの吸着量が多かったが, 高架橋度樹脂の方がAの吸着に対する選択性が高かった. 低架橋度樹脂では使用 (A+G) の濃度が低いとき, 高架橋度樹脂ではこの濃度が高いとき吸着比 (A/G) が高くなる傾向が認あられた. いずれの条件でもAはGよりも優先的に吸着することが認められ, これはUまたはTとAと塩基の相補性が主たる原因であると推定される.