紙は安価で, 生物分解性に富んだ材料であるが, 強度特に湿強度が不十分である. 合成高分子による含浸, 架橋などの補強がなされた時, 生物分解性が著しく阻害されることがある. 含浸補強が行われた構造レべル, 程度と強度増加ならびに生物分解性との関係を検討した. エポキシ樹脂をメチルアルコールで希釈して紙に含浸させることにより. 強度を増加できるが, 低濃度では逆に強度は低下し, 生物分解性も著しく低下する. 希釈せずに含浸させた場合は85%もの重量増があるにもかかわらず, パルプ繊維の生物分解性は阻害されなかった. 低濃度では付与された樹脂量は少ないが, 繊維内部まで侵入していると考えられ, したがって生物分解性は繊維内部に樹脂が浸透したか否かに支配される. 生物分解性を持っ微生物生産ポリエステルを含浸させた場合は, このポリエステルのフィルムより, 含浸紙全体の方が速やかに分解され, 空隙の多い構造が分解を促進したと考えられる.