高分子論文集
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ポリアミノビスマレイミドの熱処理条件と力学的性質との関係
中沢 士郎功刀 利夫鈴木 章泰
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1995 年 52 巻 2 号 p. 69-75

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抄録

ポリアミノビスマレイミド・オリゴマーを, 熱処理温度240℃, 260℃, および280℃で, 熱処理時間を7.5minから1920minの範囲で種々変えてフィルムを作製した. 得られたフィルムの赤外吸収スペクトル, 動的粘弾性および引張り特性などを測定し, 熱処理条件と熱処理物の力学的性質との関係を検討した. 赤外吸収スペクトルについては, マレイミドの二重結合の特性吸収である690cm-1と820cm-1の吸光度が処理時間の対数に対して直線的に減少し, スクシンイミドの-C-N-C-結合の1170cm-1の吸光度が増加した. 熱機械分析においては, 処理時間が短く硬化反応が十分進行していないプレポリマーの熱膨張率は, 200℃付近から急激に伸長し, その傾向は処理時間の増大とともに減少し, 最終的に急激な伸長がなくなりほぼ直線状となった. 動的粘弾性においては, 処理時間の増大とともに, プレポリマーのガラス転移に起因する260℃付近の分散ピークの温度が高温側にシフトし, 強度が減少し, 最終的には消失した. また, 320℃以上の測定温度域では, いずれの処理時間のフィルムもほぼ同様の温度依存性を示し, 貯蔵弾性率は320℃から熱処理物のガラス転移に基づく急激な減少を示し, また, 損失弾性率は360℃と420℃にそれぞれ熱処理物のガラス転移と熱分解によるピークを示した. 強度測定においては, 常温における引張り破壊強度と, 290℃のような高温での引張り破壊強度が最大となる試料の処理温度および処理時間は異なることが分かった. 高温において強度を最大とするためには, 硬化反応が十分行われる必要がある.

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