抄録
陽電子を高分子材料に入射した時に生成するオルソポジトロニウム (o-Ps) を利用してガラスおよびゴム状態の空孔をプローブする手法について, 我々の最近の実験結果をもとに考察した. まず原理的な視点からo-Psの特性を考察し, o-Psは“空孔を探しかつ掘る”という特性を持つこと, Ps形成はスパー内反応という高速かっ複雑な過程の中で行われているためにo-Ps強度を決定する要因を単純に空孔密度に帰することはできないことなどを指摘した. 具体例としてガラス転移点の検出, ガス収着機構の研究, 放射線照射効果の検出を取り上げた. ガラス転移点の検出ではo-Psの特性が逆に有利に働いていて, 信頼性のある手法となっていることを示した. ガス収着機構研究への利用では, o-Psによってラングミュア型・ヘンリー型の収着を区別できることを示しつつも, 必ずしもこの二つの型で整理しきれない側面をo-Psは見ていることを事実をもって示した. 放射線照射効果の検出では, ガラス状態のようにセグメント運動が凍結されている状態でo-Psは放射線照射による変化を検出できるが, セグメント運動が活発な状態では空孔構造の差異を検出することがむずかしくなることを示した. ポジトロニウムの挙動についての理解をいっそう深めれば, ユニークな空孔プローブとして極めて有望であることを指摘して結論とした.