高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
ポリフッ化ビニリデンの延伸および延伸物の構造と物性: 初期形態および延伸法の効果
永井 雅之上原 宏樹金元 哲夫
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 53 巻 9 号 p. 555-562

詳細
抄録
本研究では, α型結晶 (主鎖は螺旋構造) からなり初期形態の異なるポリフッ化ビニリデン (PVDF) 試料 (reactor powder, 溶融結晶化物, 単結晶マット, ゲル) を, 主として固相共押出法および二段延伸法 (固相共押出+引張延伸) で延伸し, 延伸挙動および得られた延伸物の構造と物性を検討した. その結果, 初期形態および延伸法は, 延性および延伸物の結晶構造と力学物性に顕著な影響を与え, 以下に述べるように二つの興味ある結果が得られた. まず, GEL (10wt%), フィルムを固相共押出法により融点付近で延伸すると, ほぼ完全にβ型結晶 (主鎖は平面ジグザグ構造で圧電性を示す) からなり, 常法 (急冷試料の冷延伸, あるいはその熱処理) によりられたβ型試料に比べて, かなり高い分子配向性 (fc=0.993) と結晶化度 (55%) を有する延伸フィルムが得られた. 次に, 最も優れた力学物性はGELフィルムを二段延伸法で延伸した場合に得られ, 室温での最大引張弾性率は9.0 GPa, (周波数35Hzでの動的ヤング率は10GPa) 破断強度は0.90GPaに達した. この引張弾性率は, これまでに報告されたPVDF延伸物の弾性率の最高値 (6.5GPa) [B.Khomami and A.J. McHugh, J. Appl. Polym. Sci., 36, 877 (1988)] の約1.4倍に相当する. PVDFの低延性は, α型は結晶分散温度以上で変形しやすいが, 延伸過程で結晶分散を示さず変形しにくいβ型に転移するためと考えられる.
著者関連情報
© 社団法人 高分子学会
前の記事
feedback
Top