高分子論文集
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キラルテンプレートを用いた不斉環化共重合
覚知 豊次上坂 貴洋小幡 誠横田 和明
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1997 年 54 巻 10 号 p. 684-695

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抄録

環化重合はビニルモノマー単位の二連子に相当する環化単位の構造を制御できるので, 不斉重合の有効な手段になる. そこで, L-スレトール, α-D-グルコース, D-マンニトールの3種の単糖類をテンプレートに用いて, ラジカル環化共重合における主鎖への不斉誘導について検討した. これらのテンプレートから導いたビス (p-ビニルベンゾエート) モノマー (1a~c) (M1) とスチレン (M2) との共重合を行い, 得られたコポリマー (2a~c) をポリ [(メチル4-ビニルベンゾエート) -co-スチレン] (3a~c) へ変換した. コポリマーは光学活性であり, キラリティーの源は孤立したM1環化単位であった. この環化単位の絶対配置を励起子キラリティー法を用いて決定した. R, R-配置をもつテンプレートは分子内環化の過程でそのキラリティーをポリマー主鎖へ転写し, S, S-ラセモ環化単位を形成した. S, S-配置をもつテンプレートはR, R-ラセモ環化単位を与えた. 非環式化合物のテンプレートである (2S, 4S) -2, 4-ペンタンジオールは環状テンプレートのD-マンニトールやL-スレイトールよりも不斉誘導には効果的であった. (2S, 4S) -2, 4-ペンタンジイルテンプレートは (S) -1, 3-ブタンジイルテンプレートより不斉誘導の効率が2倍良かった. これらテンプレートから導いたモノマー間のCDスペクトルの相違は最も安定な配座とエネルギーレベルの計算から説明できた. また, 環化共重合における不斉源を分子力学と半経験的分子軌道法を用いて確認した. L-スレイトールから導いたビスメタクリレートモノマー (4a) (M1) とスチレンの共重合では同じように孤立したM1単位がキラリティーの源であった. これに対して, D-マンニトールからのビスメタクリレートモノマ (4b) (M1) とスチレンとの共重合では新たなキラリティーが孤立M1単位よりはむしろM1二連子によっ誘起されると結論した.

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