高分子論文集
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デンドリマーの構造と機能性
今栄 東洋子
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2000 年 57 巻 12 号 p. 810-824

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抄録

デンドリマーの“樹木状ボックス”または“単分子ミセル”そして機能性分子としての能力を調べるために, デンドリマーの構造と物性に関する研究を行った. デンドリマーの世代層ごとのセグメント密度は, 分岐数の増加や末端基の伸張のみならず, 構成化学種の大きさや種類に依存して複雑に変化する. デンドリマー内に浸透する水分子の数は, セグメント密度よりは構成化学種の種類に主に依存する. このことは, デンドリマーの強いホスト能と分子認識能を示唆する. ヒドロキシル基末端をもつデンドリマーは反発相互作用力を示すので, 固体表面の付着または微粒子の凝集を阻止するための表面処理剤としての利用が期待される. 半球がそれぞれ親水性末端基と疎水性末端基からなる表面ブロックデンドリマーは, 分子対を形成して固体基板上に吸着する. 適当な親水/疎水バランスをもつデンドリマーは分子対からなる層を形成する. 吸着過程をin situで追跡し, 吸着機構を検討した. デンドリマーを保護剤として用いると, 10nm以下の大きさの金属微粒子が生成する. 微粒子は極めて安定で, 水中で長期間分散状態を保つので, 水分散系での反応触媒としての利用が可能である. デンドリマーはヒアルロン酸に極めて結合しやすく, 多量のデンドリマーを結合したビアルロン酸の形態は半屈曲鎖から剛体棒へと変化する. その結合様式は, デンドリマーがDNAや屈曲性線形高分子鎖と結合した状態とは異なる.

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