高分子論文集
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57 巻, 12 号
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  • 池田 裕子
    2000 年 57 巻 12 号 p. 761-769
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アモルファスなオキシエチレンセグメントをマトリックスとする分岐型高分子のリチウムイオン伝導性と構造について概説した. 特に, エラストマーの分子設計に基づいて, 共重合法により合成した側鎖に低分子量オキシエチレンセグメントを有する高分子量分岐型ポリ (オキシエチレン) (PEO) を中心に記述した. トリ (オキシエチレン) セグメントをもつ高分子量分岐型PEOは, 分岐鎖それ自体の化学構造と分子運動性がリチウムイオン伝導に有利であり, 同時に, 側鎖導入によって系の結晶性とガラス転移温度が低下するという分岐効果から, 30℃で10-4S/cmオーダーの高い導電率を示した. 分岐型PEOが低分子量の場合には力学特性の向上のためにネットワーク構造形成が必要となるが, この高分子量分岐型PEOはネットワーク構造を付与することなしにゴム弾性を示し, 成形加工が容易で, 高分子固体電解質材料として電極との接触も良好であった. 薄型・軽量化可能な2次電池などのデバイスへ実用化するためには, 材料設計上さらに工夫は必要であるが, 高分子量のアモルファス分岐型PEOはリチウムイオン伝導性複合体のマトリックスの成分として有望と考えられる.
  • 圓藤 紀代司, 妹尾 政宣
    2000 年 57 巻 12 号 p. 770-780
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    リビング重合法で合成した末端スチレン型ポリイソプレンマクロモノマー (SIPM) をトリクロロ (η-シクロペンタジエニル) チタニウム (III) -メチルアルミノキサン (CpTiCl3/MAO) 触媒を用いてスチレンと共重合を行うことにより, 高いシンジオタクチック立体規則性の主鎖を有するグラフト共重合体を合成した. グラフト鎖の数はSIPMとスチレンの仕込み組成比により制御が可能であった. また, 末端スチレン型ポリスチレンマクロモノマー (SSTM) を合成し, 上記メタロセン触媒を用いてスチレンとの共重合を行い, 主鎖と側鎖で立体規則性のみが異なるポリスチレングラフト共重合体を合成した. 得られたポリマーの示差走査熱量測定および広角X線回折測定の結果から, 主鎖との相溶性に起因してグラフト鎖の導入によりポリマーの結晶性が著しく減少することがわかった. さらに, CpTiCl3/MAO触媒によるマクロモノマーの単独重合により, 主鎖が高いシンジオタクチック立体規則性を有し, しかも主鎖の繰返し単位が必ず1本の分岐鎖を有するくし状ポリマーを合成した. 一方, ビス (アセチルアセトナト) ニッケル (II) (Ni (acac) 2) -MAO触媒を用いてマクロモノマーとスチレンの共重合を行い, 高イソタクチック立体規則性の主鎖を有するグラフト共重合体を合成した. SIPMとエチレンおよびプロピレンとの3元共重合体の合成ならびにシンジオタクチックグラフト共重合体を開始点としたイソプレンのリビング重合によるABAブロック共重合体の合成を行い, 新規エラストマーとしての可能性を明らかにした.
  • 林 真弓, 平尾 明
    2000 年 57 巻 12 号 p. 781-796
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    リビングアニオン重合を用いた星型高分子, なかでも分子量や種類が異なる腕セグメントから構成されるヘテロアームスターポリマー合成に関する最近の進歩について述べる. 構造が厳密に規制されたヘテロアームスターポリマー合成は極めて困難なため, そのほとんどが90年代になって報告されている. 現時点までの合成例は, 大きく2つに分けられる. 第1は多官能クロロシランを結合試薬として用い, リビングアニオンポリマーの立体障害による反応性の違いを利用して, 順次結合させていく方法であり, 第2はマクロモノマーを用い, 結合反応と重合反応を組み合わせた方法である. 最近筆者らは, ポリマー鎖中にクロロメチルフェニル基 (ベンジル塩化物) の導入個数と導入位置を厳密に規制する方法を開発し, 構造が明確な鎖末端, 鎖中に2~16個導入した新規のクロロメチルフェニル化ポリマーの合成に成功した. これらのポリマーにリビングアニオンポリマーを反応させることで, さまざまな構造のヘテロアームスターポリマーの系統的合成が可能になった. さらにリビングポリマーと末端に1,1-ジフェニルエチレンを有するポリマーを反応させることで得られる, 1本のポリマー鎖からなり, その反応結合点にアニオンを有するポリマーアニオンを用い, クロロメチルフェニル基1個当たりに2本のポリマー鎖を導入するまったく新しい方法を展開し, 新しいタイプのヘテロアームスターポリマーの合成に成功した.
  • 氏家 誠司, 苧坂 基子, 矢野 由美, 飯村 一賀
    2000 年 57 巻 12 号 p. 797-802
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリアミン系分岐高分子を構成単位とするイオンコンプレックス型の液晶系について, 液晶性, 熱的性質および配向構造を検討した. 分岐高分子とアルカン酸あるいはカルボキシル基をもつアゾベンゼン誘導体とのイオンコンプレックスは, 流動性液晶相を形成する. イオン化した分岐高分子は, イオン性液晶に特有なイオン性凝集層をアニオンとともに形成し, 液晶性および熱安定性に直接影響を与える. 分岐鎖の存在は, イオン性凝集層の熱安定性を減少させる. このため, 液晶-等方相転移温度および液晶-等方相転移エンタルピーが低下する. これらの結果は, 適度な分岐鎖の導入が, 液晶性および相転移挙動の制御に利用できることを示している.
  • 松下 裕秀, 高野 敦志, 鳥飼 直也, 渡部 淳, 吉田 祐馬, 百瀬 陽, 鈴木 次郎
    2000 年 57 巻 12 号 p. 803-809
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    A鎖の末端から長さの等しいB鎖が分岐したAB2型のグラフト共重合体を調製し, そのバルク状態の平衡モルホロジーを観察した. A, B成分はポリスチレン (S), ポリ (2-ビニルピリジン) (P) である SとPの長さの比, すなわち体積分率が変化するにつれ, AB型のブロック共重合体と類似したミクロ相分離構造が出現したが, グラフト共重合体の非対称な分子構造を反映して, モルホロジー転移する組成はブロック共重合体よりSの体積分率が高い方にずれることがわかった. またSP2が作るミクロドメインの繰返し周期は同じ分子量をもつSPのものより定量的に小さいことも確かめられた. そこでS鎖の拡がりを中性子散乱で測定したところ, 分子鎖のひずみはブロック共重合体の場合より小さいことが判明し, ミクロドメイン構造が分子レベルで解かれた.
  • 今栄 東洋子
    2000 年 57 巻 12 号 p. 810-824
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    デンドリマーの“樹木状ボックス”または“単分子ミセル”そして機能性分子としての能力を調べるために, デンドリマーの構造と物性に関する研究を行った. デンドリマーの世代層ごとのセグメント密度は, 分岐数の増加や末端基の伸張のみならず, 構成化学種の大きさや種類に依存して複雑に変化する. デンドリマー内に浸透する水分子の数は, セグメント密度よりは構成化学種の種類に主に依存する. このことは, デンドリマーの強いホスト能と分子認識能を示唆する. ヒドロキシル基末端をもつデンドリマーは反発相互作用力を示すので, 固体表面の付着または微粒子の凝集を阻止するための表面処理剤としての利用が期待される. 半球がそれぞれ親水性末端基と疎水性末端基からなる表面ブロックデンドリマーは, 分子対を形成して固体基板上に吸着する. 適当な親水/疎水バランスをもつデンドリマーは分子対からなる層を形成する. 吸着過程をin situで追跡し, 吸着機構を検討した. デンドリマーを保護剤として用いると, 10nm以下の大きさの金属微粒子が生成する. 微粒子は極めて安定で, 水中で長期間分散状態を保つので, 水分散系での反応触媒としての利用が可能である. デンドリマーはヒアルロン酸に極めて結合しやすく, 多量のデンドリマーを結合したビアルロン酸の形態は半屈曲鎖から剛体棒へと変化する. その結合様式は, デンドリマーがDNAや屈曲性線形高分子鎖と結合した状態とは異なる.
  • 石田 雄一, 寺境 光俊, 柿本 雅明
    2000 年 57 巻 12 号 p. 825-829
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    中心芳香環の5-位にブロモ基を有する第2世代の芳香族ポリアミドデンドロン (2) の熱的性質を調べたところ, 示差走査熱量測定 (DSC) 曲線では208℃と254℃にそれぞれ吸熱と発熱ピークが見られ, また偏光顕微鏡では昇温過程においてそれぞれのピークに対応する疑似溶融状態と結晶化が観察された. エタノールで再結晶後のデンドロン2ではDSC曲線で結晶化に対応する発熱ピークのみが見られた. さらに, 中心置換基の異なるデンドロンをいくつか合成し, その熱的性質を調べた. 4-位にメチル基を有するデンドロン5はDSC曲線で2つの吸熱ピークと1つの発熱ピークを有し, 偏光顕微鏡観察では疑似溶融状態において初め複屈折性を示したのち等方的となり, 最終的には結晶化した. 5-位にメチルエステル基を有するデンドロン6のDSC曲線には275℃と327℃に吸熱ピークが存在したが, デンドロン2のような溶融状態や結晶化は観察されなかった.
  • 山岸 忠明, 井之脇 未知, 小澤 雅昭, 中本 義章, 石田 眞一郎, 野本 雅弘
    2000 年 57 巻 12 号 p. 830-835
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    塩酸および酢酸亜鉛を触媒として用いることで, オルト率が76%, 88%および97%の3種類のノボラック樹脂 (NR76, NR88およびNR97) およびアセチル化ノボラック樹脂 (Ac76, Ac88およびAc97) を合成した. それぞれの樹脂についてテトラヒドロフラン (THF) 中で希薄溶液粘度測定を行ったところ, MHS式 ([η] =KMa) の指数a値はNR76およびNR88ではa=0.33, NR97はa=0.22となった. 一方, Ac76およびAc88はa=0. 29および0.33, Ac97はa=0.34となり, NR97とAc97を比較すると, アセチル化前後でa値に大きな違いが見られた. NR97ではortho-ortho'メチレン結合の割合が50%近くあることから, ノボラック樹脂は分岐状高分子であることに加え, ortho-ortho'位でのフェノール性ヒドロキシル基間の分子内水素結合が強く作用することによって, 溶液中でかなり緻密な形態をとると考えられた. さらに溶媒和測定よりノボラック樹脂分子と溶媒分子との相互作用を検討した結果, どの溶媒中でもNR97の溶媒和数が小さくなった. これはNR97がほかの樹脂に比べてortho-ortho'間の分子内水素結合が強く作用するため, 溶媒とヒドロキシル基間の相互作用が弱められるためであると考えられた.
  • 藤ヶ谷 剛彦, 上田 充
    2000 年 57 巻 12 号 p. 836-841
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    フェノール性ヒドロキシル基を有するデンドリマー (2b) を第1世代ポリアミドアミンデンドリマーとN- (2-ヒドロキシフェニル) -2-プロペンアミド誘導体のマイケル付加反応により合成した. 得られたデンドリマーは多くの有機溶媒に可溶で, しかもアモルファスであり, スピンキャストによりフィルムを与えた. そのフィルムは300nm以上で非常に透明であり, またアルカリ現像液に対しても可溶であった. 30wt%の溶解抑止剤1- {1, 1-ビス [4- (2-ジアゾ-1 (2H) ナフタレノン-5-スルホニルオキシ) フェニル] エチル} -4- {1- [4- (2-ジアゾ-1 (2H) ナフタレノン-5-スルホニルオキシ) フェニル] メチルエチル} ベンゼン (DNQ) を含むデンドリマーレジストフィルムの感度は65mJ/cm2, そしてコントラストは3.0を示した. さらに, このレジストにUV光 (i線) 照射後, アルカリ水溶液で現像することにより, 明確なポジ型像を得ることができた.
  • 木村 睦, 加藤 道範, 武藤 豪志, 英 謙二, 白井 汪芳
    2000 年 57 巻 12 号 p. 842-846
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    デンドリマー周辺に直鎖状の熱応答性高分子を導入したウニ型デンドリマーを合成した. 合成したウニ型デンドリマーは, 種々のゲストを静電的相互作用によってデンドリマー内の空間に固定化することができることが明らかとなった. さらに, ゲスト分子のもつ触媒活性について検討を行ったところ, 熱応答性高分子の変化に伴って触媒活性の変化が見られた. このことから, 今回合成したウニ型デンドリマーは, 温度応答性ナノカプセルとして機能することが明らかとなった.
  • 門川 淳一, 猪股 志麻, 岩崎 康弘, 烏 マサ, 多賀谷 英幸
    2000 年 57 巻 12 号 p. 847-850
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    トリメチルシリルジエノラート1を単量体として用い, クマリンとのMichael付加型反応について検討したところ, 共重合が進行することを見いだした. また, 生成したオリゴマーは分岐した構造を有していると推定された.
  • 瀬 和則, 鈴木 正明
    2000 年 57 巻 12 号 p. 851-854
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    (p-イソプロペニルフェネチル) ポリ (α-メチルスチレン) マクロモノマー (PMSM) を高真空下, -78℃において, n-ブチルリチウム (n-BuLi) n-BuLiを開始剤に用いて, アニオンリビング重合して, PMSMを腕鎖とする (PMSM) N星型高分子を合成した. 条件が異なる8種類の重合において, 開始剤効率 (fI) は0.02から0.70の範囲に分布した. fIが0.37以上の場合, 開始剤の一部は重合容器内のガラス表面に付着している不純物 (IimG=55×10-5mol) とPMSMに含まれている不純物 (IimPMSM=5.4×10-5mol・g-1) によって失活したことがわかった. fIが0.10下の場合, 開始剤の大部分は失活したと思われる. IimGIimPMSMの値を考慮すれば, マクロモノマーを用いた分子設計が可能であることがわかった.
  • 加和 学, 元田 兼一郎
    2000 年 57 巻 12 号 p. 855-858
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    カルボキシル基をフォーカルポイントに有するポリベンジルエーテルデンドロンを配位子としたTb3+やEu3+などランタノイド陽イオンカルボキシレート錯体は, 該デンドロンのアンテナ効果による顕著な蛍光増感現象を示す. 本研究では, フォーカルポイント芳香環上の分岐位置がデンドロン世代数によらず大きな影響を与えることを明らかとし, 特に3, 4-ジオキシ安息香酸型がTb3+の蛍光増感に好適であることを見い出した.
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