高分子論文集
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構造の異なるフェノールノボラック樹脂の合成とその溶液物性
山岸 忠明井之脇 未知小澤 雅昭中本 義章石田 眞一郎野本 雅弘
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2000 年 57 巻 12 号 p. 830-835

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抄録

塩酸および酢酸亜鉛を触媒として用いることで, オルト率が76%, 88%および97%の3種類のノボラック樹脂 (NR76, NR88およびNR97) およびアセチル化ノボラック樹脂 (Ac76, Ac88およびAc97) を合成した. それぞれの樹脂についてテトラヒドロフラン (THF) 中で希薄溶液粘度測定を行ったところ, MHS式 ([η] =KMa) の指数a値はNR76およびNR88ではa=0.33, NR97はa=0.22となった. 一方, Ac76およびAc88はa=0. 29および0.33, Ac97はa=0.34となり, NR97とAc97を比較すると, アセチル化前後でa値に大きな違いが見られた. NR97ではortho-ortho'メチレン結合の割合が50%近くあることから, ノボラック樹脂は分岐状高分子であることに加え, ortho-ortho'位でのフェノール性ヒドロキシル基間の分子内水素結合が強く作用することによって, 溶液中でかなり緻密な形態をとると考えられた. さらに溶媒和測定よりノボラック樹脂分子と溶媒分子との相互作用を検討した結果, どの溶媒中でもNR97の溶媒和数が小さくなった. これはNR97がほかの樹脂に比べてortho-ortho'間の分子内水素結合が強く作用するため, 溶媒とヒドロキシル基間の相互作用が弱められるためであると考えられた.

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