抄録
デンドリマーの末端官能基からアミノ酸N-カルボキシ無水物 (NCA) のリビング開環重合を行い, デンドリマーとその周囲を覆う多くの線状高分子とからなるABn型ブロック共重合体 (星型デンドリマー) の合成を行った. すなわち, 多官能性高分子開始剤として, ポリ (トリメチレンイミン) デンドリマー (ポリ (プロピレンイミン) デンドリマー) およびポリ (アミドアミン) デンドリマーを用い, モノマーとしてサルコシンNCA (N-メチルグリシンNCA) およびアセチル化糖置換L-セリンNCAを使用して, 3系統の重合反応を行い, ポリ (トリメチレンイミン) デンドリマー-block-ポリサルコシンブロック共重合体 (1), ポリ (アミドアミン) デンドリマー-block-ポリサルコシンブロック共重合体 (2) およびポリ (アミドアミン) デンドリマー-block-オリゴ [O- (2-アセトアミド-2-デオキシーβ-D-グルコピラノシル) -L-セリン] ブロック共重合体 (6b) などを合成した. 1については, 重水中における分子サイズを中性子小角散乱測定により評価したところ, ポリサルコシン鎖は縮んだ構造をとっていることが示唆された. 星型デンドリマーの放射成長鎖を異種高分子との相溶化セグメントとして活用し, デンドリマー含有相溶ブレンドを得る目的で, 2とポリビニルアルコール (PVA) とのブレンドを検討した. ポリサルコシン鎖の鎖長が19の2とPVAとが相溶することが, 示差走査熱量測定, 動的粘弾性測定, FT-IR測定などによる解析により明らかになった. また, この星型デンドリマーの添加によりPVAの熱安定性が向上することがわかった. 星型デンドリマーの放射成長鎖を, 生体分子との相互作用に利用するために, オリゴ糖ペプチド鎖をもつ星型デンドリマー6bの分子認識能を小麦胚芽レクチン (WGA) を用いた赤血球凝集阻害試験により評価した. WGAレクチンにより認識されるN-アセチル-D-グルコサミンをもつ6bは良好な細胞認識能を示した. オリゴ糖ペプチド鎖をもつ星型デンドリマーは, 薬物および遺伝子送達システムの標的性輸送担体などとしての応用展開が期待できる.