高分子論文集
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溶融押出し温度の異なる低密度ポリエチレンとベーマイト処理アルミニウムの接着性
石井 敏也本郷 忠志森田 まち子小川 俊夫
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2003 年 60 巻 3 号 p. 128-137

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抄録

ベーマイト処理アルミニウムと押出しラミネーションにより貼り合わせた低密度ポリエチレン (LDPE) の接着において, LDPEの溶融押出し温度の接着に対する影響を検討した. ベーマイト (AlOOH) はアルミニウムを沸騰水で処理することにより生成し, 接着性や耐食性に優れていることが知られている. 一方, 低密度ポリエチレンは本来極性基が存在しないために不活性であり接着には不利である. そこで接着性を付与するために押出しラミネーションでは溶融押出し温度をできるだけ高くして熱酸化させる方法がとられる. 本研究ではLDPEの溶融押出し温度を280℃から340℃まで変化させて押出しラミネーションによりベーマイト処理アルミニウムに接着しはく離強度を測定した. その結果, 溶融押出し温度320℃がもっとも高い値を示し, はく離強度は約800N/mに達した. LDPEの溶融押出し温度を分解温度近傍まで上げると酸化度は高くなるが, その反面LDPE表層の分解が進むためベーマイトと接するLDPE表面の凝集強度が低下する. このため, 溶融押出し温度340℃はベーマイトと接着しているLDPE表面の凝集強度が低く, LDPEの凝集破壊が起こっていた. 押出しラミネーションによりLDPEを接着させる場合, 表面酸化, 表面凝集力およびアンカー効果のバランスによって最適な溶融押出し温度条件が存在することが明らかになった.

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© 社団法人 高分子学会
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