抄録
2枚の楕円ミラーを直角に接合したSide-by-Sideミラーを用いた点収束光学系を高分子溶液の小角X線散乱測定用に構成した. 楕円ミラーはタングステンと炭化ホウ素を交互に積層させた人工多層膜から成り, 層問距離はBraggの条件を満たすようにミラーの一端から他端まで変化させた. この光学系を用い, シクロヘキサン (34.5℃) 中のポリスチレンからなるポリマクロモノマーの平均自乗回転半径〈S2〉と粒子散乱関数P (θ) を決定した. 以前に決定されたこの高分子に対する分子パラメータを用い, 中村と則末の理論から直径dの円筒断面をもつみみず鎖に対する散乱関数を計算したところ実験値と極めてよく一致した. 一方で, P (θ) をみみず鎖の中心線に対する散乱関数に因子exp (-k2d2/16) を掛けて表す簡便法 (kは散乱ベクトルの絶対値) はKratkyプロットにおいて実験値よりも低いピークを与えた.