高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
60 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 龍野 宏人, 安藤 慎治
    2003 年 60 巻 4 号 p. 145-157
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    含フッ素高分子は, 耐熱・耐寒性, 耐薬品性, 耐候性などに優れ, 難燃性, 絶縁性, 低摩擦性, 非粘着性といった特性を有する機能性に富む材料である. 本報では, 特異的な物性をもつものの溶媒への溶解性が低く, しかも多様な固体構造を有するために構造解析が困難とされてきたパーフルオロ高分子に着目し, 19F Magic Angle Spinning (MAS) NMR法を用いた分子構造分析や固体構造解析に焦点をあてて概説した. まず, 固体19F MAS NMRの測定原理とMASの効果について述べ, 次いでこの手法を, 結晶性のポリテトラフルオロエチレン (PTFE), テトラフルオロエチレン (TFE) とヘキサフルオロプロピレン (HFP) のランダム共重合体 (FEP), TFEとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体 (PFA), 非晶性のパーフルオロポリマー, そしてパーフルオロエラストマーおよびイオノマーに適用して得られた分子構造と分子運動性に関する知見を紹介するとともに, パーフルオロ高分子のキャラクタリゼーション手法としての19F MAS NMRの有効性についてまとめた.
  • 佐藤 尚弘, 金尾 雅彰
    2003 年 60 巻 4 号 p. 158-168
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    ポリ (n-ヘキシルイソシアナート) (PHIC) のn-ヘキサン溶液について, 異なる温度で静的と動的光散乱測定を行った. 25℃では正常な光散乱挙動を呈した溶液が, 15℃に冷却すると低角度で異常に強い光散乱を生じ, かつ散乱光強度の時間相関関数g (2) (t) には2種類の緩和モードの減衰が認められた. これらの異常な散乱挙動は, 溶液中でPHICの会合体が形成されたことを示している. 異常散乱を呈する溶液に対する静的構造因子S (k) とg (2) (t) から, 静的構造因子の速い緩和成分Sfast (k) と遅い緩和成分Sslow (k), および両緩和の第1キュムラントΓfastΓslowを求めた. これらのうち, Sslow (k) とΓrslowからは形成された会合体の回転半径と流体力学的半径を見積もり, Sfast (k) とΓfastからは会合体を含まない溶液に対する情報を得た. さらに, 得られた結果より, PHIC会合体の形状と会合体形成にかかわっている分子間相互作用について考察した.
  • 米森 重明, 島田 正
    2003 年 60 巻 4 号 p. 169-175
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    イソシアナートと反応させてポリウレタンを生成するポリ (プロピレンオキシド) 系ポリオールの末端基の解析法として, 直接1Hおよび13C NMRを用いない方法を総合的に研究した. 末端基としては, ヒドロキシル基と少量の不飽和基の2種が存在しており, ヒドロキシル基の定量 (ヒドロキシル基価) には, ピリジン溶液でのフタル酸エステル化法 (JIS法) に替わる近赤外法を開発した. また定性では, トリフルオロ酢酸付加物の19F NMRによる解析法を示した. 水酸末端基数の違いによる高速液体クロマトグラフィー (HPLC) による分離法を確立した. 不飽和基の定量法として酢酸第二水銀法に替わる一塩化ヨウ素付加による方法を, また不飽和基のアリル基・cis-プロペニル基の識別法としてラマン法を示した.
  • 中村 洋, 網谷 圭二, 寺尾 憲, 則末 尚志
    2003 年 60 巻 4 号 p. 176-180
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    2枚の楕円ミラーを直角に接合したSide-by-Sideミラーを用いた点収束光学系を高分子溶液の小角X線散乱測定用に構成した. 楕円ミラーはタングステンと炭化ホウ素を交互に積層させた人工多層膜から成り, 層問距離はBraggの条件を満たすようにミラーの一端から他端まで変化させた. この光学系を用い, シクロヘキサン (34.5℃) 中のポリスチレンからなるポリマクロモノマーの平均自乗回転半径〈S2〉と粒子散乱関数P (θ) を決定した. 以前に決定されたこの高分子に対する分子パラメータを用い, 中村と則末の理論から直径dの円筒断面をもつみみず鎖に対する散乱関数を計算したところ実験値と極めてよく一致した. 一方で, P (θ) をみみず鎖の中心線に対する散乱関数に因子exp (-k2d2/16) を掛けて表す簡便法 (kは散乱ベクトルの絶対値) はKratkyプロットにおいて実験値よりも低いピークを与えた.
  • 増永 啓康, 古屋 秀峰
    2003 年 60 巻 4 号 p. 181-185
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    分子片末端に引力相互作用を有する高分子鎖について, 動的平均場法を適用した計算機シミュレーションを行い, 形成される系の相分離構造を検討した. 引力相互作用が強くなるに伴い相分離構造の成長が遅くなり, 任意の値よりも強くなるとミクロ相分離構造が発現することがわかった. また, 相分離の途中で末端セグメントの引力相互作用の大きさを変えた場合の構造変化についても検討した. マクロに相分離した海島構造を初期構造として, 末端セグメントどうしの引力相互作用を強くした場合に短い紐が分散したような構造が観測された. このような構造の報告例はなく, 分子末端に引力相互作用をもつ高分子混合系において相分離の途中で引力相互作用を変えることにより, 新規相分離構造が出現する可能性を示した.
  • 松田 裕生, 山崎 静夫, 朝倉 哲郎
    2003 年 60 巻 4 号 p. 186-191
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    テレフタル酸ジクロライド (TPC), 1, 4-フェニレンジアミン (PPDA), 3, 4' -ジアミノジフェニルエーテル (3, 4' -DAPE) の共重合 (50/25/25のモル比) により得られた全芳香族ポリアミドについて, N-メチル-2-ピロリドン溶媒系で1H NMR構造解析を行った。180℃で7日間加熱処理することによって, ポリマー溶液は流動性を失い, ゲル化塊状物が得られるので, 主として, 熱処理に伴うゲル化と関連した水素結合の形成に着目した. 重水を用いたH-D交換速度の解析や2次元NOESYスペクトルから, 熱処理に伴い, 主に, 1, 4-フェニレンテレフタルアミドユニットが水素結合を形成し, これが架橋点となった物理ゲルであると推定された. さらに, ゲル化塊状物では, 共存する塩化カルシウムの濃度が半分程度に低下していることが高周波誘導プラズマ分光分析により確認され, 共存塩の濃度の低下が, ゲル化と関係していることが明らかとなった.
  • 山岸 忠明, 高橋 竜平, 永谷 大, 小西 玄一, 中本 義章
    2003 年 60 巻 4 号 p. 192-198
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    側鎖の異なる3種類のオルトクレゾール樹脂 (Ac-OCR, Oc-OCR, La-OCR) を合成し, テトラヒドロフラン (THF) およびメチルイソブチルケトン (MIBK) /n-オクタン混合溶媒中での希薄溶液粘度測定より溶液中の分子形態に及ぼす側鎖の影響を検討した. THF中では三つの樹脂のうちLa-OCRが異なった挙動をとり, 側鎖を有するオルトクレゾール樹脂の分子形態は, 主鎖のフェノール骨格により決まるが側鎖の影響も無視できないことが明らかとなった. La-OCRの場合, n-オクタン中では主鎖であるフェノール骨格が内部に凝集しアルキル側鎖が外側に張り出すミセル類似の分子形態をとると考えられた. 一方, MIBK中では主鎖と側鎖がともに混じり合い拡がった形態をとると考えられた. このように, 長いアルキル鎖を導入したオルトクレゾール樹脂では主鎖と側鎖の溶解性が異なることにより選択的な溶媒を用いることで主鎖と側鎖の溶存状態に応じて主鎖骨格の凝集状態が変わり, その結果, 分子鎖の形態が変化すると考えられた.
  • 川口 謙, 木村 一雄, 朝倉 哲郎
    2003 年 60 巻 4 号 p. 199-202
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    生体膜に結合したペプチドのモデル系として, バイセルに結合したバリノマイシンの系を選び, 高分解能マジックアングルスピニング下で溶液1H NMRを測定した. 直接, バリノマイシンの高分解能1H NMRスペクトルを観測することができ, これによって, バイセルに結合した状態で, ペプチドの立体構造を決定できることを示した.
feedback
Top