2004 年 61 巻 5 号 p. 315-322
スチレン/ブタジエン/スチレン (SBS) ブロックコポリマーは代表的な熱可塑性エラストマーとして広く用いられているが, ポリブタジエン (PB) 部分に由来する二重結合のため, 耐熱性, 耐候性に劣るという問題がある. そこで, 筆者らはSBSのPB中の2種の二重結合である1,2-, 1,4-結合に注目し, 前者を高選択的に水素添加した新規スチレン系熱可塑性エラストマー (ポリ [スチレン-b- (1,4-ブタジエン-r-ブチレン) -b-スチレン]: SBBS), また完全に水素添加した (ポリ [スチレン-b- (エチレン-r-ブチレン) -b-スチレン]: SEBS) を合成した. これらとSBSとのエージング試験の比較から1,2-結合の方が1,4-結合よりポリマーのゲル形成により大きな影響を及ぼしていることをこれまでに報告した. さらに今回は両結合のゲル形成に及ぼす影響を定量的に議論するため, ab initio量子化学計算と速度論シミュレーションによる検討を行った. その結果, 1,2-結合の方が1,4-結合よりもわずかに脱水素反応性が高く, このわずかな違いが自動酸化の機構におけるゲル生成速度に大きな影響を及ぼしていることが示唆された.