ソフトマターとしてフィラーを天然ゴムマトリックスに分散させたナノコンポジットを対象として, シリカやカーボンブラックの分散状態を透過型電子顕微鏡 (TEM) とコンピュータトモグラフィーを組合せた手法 (3D-TEM) により三次元的に可視化することができた. これらナノフィラーがゴム中で凝集してアグリゲートを形成していることが明らかとなり, そのサイズと分布, 形状を示すパラメータとしてのアスペクト比などの計測が可能となった. さらにアグリゲートの凝集によりアグロメレートが形成され, ゴム中でアグロメレートはネットワーク構造となっていることも可視化像からわかった. カーボンブラックの体積抵抗率測定は, 容積分率0.17付近をしきい値としてパーコレートすることを示し, さらに3D-TEMに基づく構造パラメータとの比較から電子がカーボンアグリゲート間の距離約3nmのゴム相をホッピングして導電性を示すことが推定された. 3D-TEMにより得られた構造パラメータと物性との相関の確立は, ナノテクノロジーを科学の土台の上で発展させる重要な役割を演じるであろうことが示唆される.