2025 年 46 巻 p. 37-54
本稿では、フィクション作品においてワタシを常用する男性の言葉づかいを観察し、その言葉づかいと結びつく人物像を分析した。少年マンガと現代小説を取り上げ、ワタシを常用する男性の言葉づかいを分析したところ、スタイル、音変化、ぞんざいな語彙の使用に特徴が見られた。そして、その言葉づかいは《力を持つ人物》と結びつくと分析した。同様の言葉づかいはオレを常用する男性にも見られるため、オレを常用する男性の言葉づかいもまた《力を持つ人物》と結びつくとした。ただし、男性のワタシは配慮を必要とする場合に使用されることから《力を持つ人物》の中でも《教養のある権力者》であり、オレはその語自体が《男》と結びつくことから《力を持つ人物》の中でも《男らしい力を持つ人物》であると考えた。以上を踏まえ、男性のワタシ常用は、男らしい力ではなく教養がもたらす力と結びつく点で、オレとは異なる人物像と結びつくと結論づけた。