口腔病学会雑誌
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部分床義歯装着前後の比較研究 (少数歯欠損型義歯について)
川崎 隆二
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1969 年 36 巻 4 号 p. 261-277

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抄録

本研究の被験症例は45症例であり, 下顎1側性臼歯中間義歯25症例と下顎1側性臼歯遊離端義歯20症例である。著者は昭和42年4月から昭和44年4月までの2力年間に東京医科歯科大学歯学部附属病院補綴科に来院した健康な患者からそのような症例を抽出した。また著者は義歯を装着したのち, 2力年間経時的に予後観察を行った。その結果を要約すると, 次の通りである。
1.患者の義歯に対する異物感が消失するのは, 大体10日以内であり, 義歯の使用経験の有無, 金属床義歯とレジン床義歯の間および中間義歯と遊離端義歯の間において差は認められなかった。使用状況については, 金属床義歯はレジン床義歯よりも義歯使用中止症例数が少なく, また使用中止の原因の大部分は義歯の破損と紛失であった。
2.義歯床下粘膜の変化は圧痕がわずかに認められた程度で, 発赤, 腫脹, 褥創性潰瘍などの変化は認められなかった。
3.鉤歯の動揺度を調べたが, 義歯の装着期間が長くなるほど動揺度が強くなる鉤歯の数が増加していく傾向が認められた。しかし鉤歯以外の残存歯の動揺度は義歯装着後3カ月で約3%に増加が認められ, それ以後は一定であった。
4.破損部位はろう着部に多く, 義歯の装着期間が長くなるほど破損率は高くなる。また, 金属床義歯はレジン床義歯よりも破損症例数が少かった。
5.義歯の装着期間に比例して, 鉤歯のウ蝕罹患歯率は高くなる。また, 鉤歯のウ蝕罹患歯率は鉤歯以外の残存歯よりも高い。しかし, 処置された歯には義歯の装着後もウ蝕がほとんど認められない。
6.鉤歯では, 臨床歯冠長は装着期間が長くなるほど増し, gingival pocketsの深さは浅くなった。
7.鉤の変形は義歯装着後3日で大体義歯装着後90日間の約70%の変形をきたし, その後の変形はごくわずかである。また, 遊離端義歯の鉤の変形は中間義歯の鉤よりもわずかに大きいようである。

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