口腔病学会雑誌
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嫌気性コリネバクテリウムのヒト骨髄よりの分離成績とその制がん作用
藤田 浩才野 佑之
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1971 年 38 巻 3 号 p. 294-299

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抄録

1) 120例のヒト骨髄血から48%にCorynebacterium liquefaciensが分離された。正常, 健康人の方ががん患者に比し, 高い分離率を示した。
2) 本菌の骨髄血よりの分離成績は一部皮膚常在菌よりの汚染が否定できないが, 無菌的に剔出した肋骨骨髄からも本菌が分離されることより, 本菌はヒトの骨髄に保菌されていると考えられる。
3) 本菌生菌をマウスに静注し, 菌の消長を検討すると, 投与後3日迄は各臓器に分布するが, 1~8週後一には骨髄, 肝, 脾等, 網内系臓器に長期間保菌される。
4) 本菌に対する抗体を感作血球凝集反応により検討した。446例の測定結果から, がん患者は非がん患者よりも高く, その中でも, 直腸がん, 食道がん, 造血器腫瘍, 胃がん, 子宮がん患者に高く, 非がん群では関節炎, リンパ節や脾腫大のある患者に高い傾向を示した。
5) ヒト骨髄よりの新鮮分離株のホルマリン死菌を用い, Sarcoma 180に対する抗腫瘍性が検討された。その結果, 皮下腫瘍に対して, 移植2日後, 本菌1mg以上, 腹腔内或は静脈内投与により約70%の阻止率を示した。腹水型に対しても, 本菌の投与は50%生存率を約2倍に延長する効果を有した。

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