口腔病学会雑誌
Online ISSN : 1884-5185
Print ISSN : 0300-9149
金属焼付陶材の結合に関する基礎的研究
筒井 英明
著者情報
ジャーナル フリー

1971 年 38 巻 4 号 p. 452-466

詳細
抄録

金属焼付ポーセレンの結合機構を解明するために, X線マイクロアナライザーを用いて結合部組織の微小分析を行ない, あわせて引張試験を行なった。この研究では特に結合に関与していると思われる元素について線分析および面分析を行ない, 同時に合金表面の酸化被膜の役割りや各種元素の界面での挙動を追求, 分析した。その結果, 金属と陶材との結合に関して次のような知見が得られた。
(1) 金属と陶材との界面ではInとSnが特に高い濃度を示す。また特性X線像によると, 界面にSn, Inが集中しており, このことから金属と陶材との結合には, SnとInとがかなりの役割りを果たしていうものと考えられる。
(2) 純金属と陶材を焼付けた場合, 引張試験の結果は合金に比較してかなり劣り, 結合の界面から破断することが多くみられる。この場合X線マイクロアナライザーの分析結果では, 結合の界面でInが高い値を示さないが, このことは結合性が悪いことと関連しているものと考えられる。
(3) 高真空中で熱処理した場合, 金属表面は非常にきれいになるが, これを焼付けした場合普通に熱処理した場合と比較して, 引張り強さは同じかあるいはやや強くなる。このことから熱処理の際形成されると考えられる酸化被膜の役割りは結合にあまり大きな影響をおよぼさないと考えられる。
(4) 高真空中で陶材を焼成すると, 陶材中に気泡が生じ, 引張強さは弱くなるが金属との結合自体は良好である。X線マイクロアナライザーの分析結果は, 結合面でSn, Inが高い値を示し, 普通の焼成の場合と差は認められない。
(5) 合金の場合, Inの界面への集中は比較的短時間で行なわれ, 時間の増加とともにさらに増加する。また純金属の場合, 短時間では界面へのInの集中は起らないが, 長時間ではInの界面への集中が起こる。これらのことから, 合金―陶材の焼成においてInが界面へ集中するのは, 主として合金側からの拡散であることが考えられる。
(6) Feについては純金属―陶材の場合, 長時間焼成すると界面へ集中するが, 短時間では集中しない。また合金―陶材の場合, 短時間では界面でFe原子の存在はみられないし, 時間を増加しても同様である。これらのことからFeは結合にそれ程関与していないと考えられる。
(7) 焼付用合金の場合, Au, Niがわずかであるが, 金属側の界面近傍で拡散していることが認められた。

著者関連情報
© 口腔病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top