口腔病学会雑誌
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生体内における歯質の酸溶解性の測定
奥野 忠信
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1971 年 38 巻 4 号 p. 483-495

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抄録

歯質の抗う蝕性を精細に比較する目的をもって, 生体内でエナメル質の酸溶解性を測定した。すなわち乳酸寒天 (乳酸: 2N, pH2.5, 寒天: 5%) を先端を切ったツベルクリン用注射筒 (φ4mm) につめ, これを人では上顎中切歯に, 犬では第1大臼歯に3分間接触させ, 寒天内に溶出したカルシウムを原子吸光分光分析法を用いて定量した。これによってこれまでにない高い精度と再現性をもった測定値が得られ, 酸溶解量と各種因子との関係について次のような知見を得た。
1) 同一口腔内における左右歯の酸溶解量には差が認められなかった。
2) 酸溶解量はDMF歯数との間に相関係数+0.50の明かな相関関係を示した。
3) Snyder testの結果はDMF歯数との間には有意の相関を示さなかったが, 酸溶解量との間にはわずかな相関性を示した。
4) 弗素剤塗布の酸溶解性減少の効果は1週後には認められたが, 4週後ではすでに失われ, 10週後には統計学的には有意差とならなかったが逆に増加した疑いさえあった。
5) 生活歯に比較した抜髄歯の酸溶解量は抜髄1および3カ月後には変らなかったが, 6カ月後にはやや増加し, しかもその偏差が著しく大きくなった。
6) 乳酸寒天接触による歯面の侵襲は軽く, 実際的には問題とならない程度のものであった。
7) 本研究によって創始された乳酸寒天接触によるカルシウム溶出量の測定は抗う蝕性検定の有力な手段と考えられる。

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